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“トレード対決”でロッテ・岡大海が見せつけた韋駄天ぶり

 

古巣・札幌ドームで躍動した岡


 ようやく眠れるポテンシャルの片鱗を見せた。8月16日の日本ハム戦(札幌ドーム)、九番・中堅でスタメンへ名を連ねた岡大海は3安打1打点の活躍で6対2の勝利に貢献。かつての本拠地で変わらぬ声援を浴びた。

“因縁の対決”だった。相手の先発マウンドには7月26日に自身とトレードになった藤岡貴裕。「意識しないほうが無理。がっつり意識した」という3回無死一塁で迎えた最初の打席。ここからの流れが見事だった。藤岡の外角ストレートを一二塁間に弾き返して無死一、三塁とチャンスを拡大すると、次打者・平沢大河の適時打で一塁から一気に生還する。

 その圧倒的なスピードに誰もが目を見張った。確かにフルカウントだったこともあり、岡はスタートを切っていた。だが、平沢の打球は外野の間を割ったわけではない。中堅・西川遥輝は回り込むようにボールを押さえると、体を反転させながら素早く二塁・渡邉諒へ転送。渡邉の本塁への送球こそやや逸れたものの、ストライク送球だったとしても関係がなかっただろう。岡の韋駄天ぶりがすべてを上回っていた。

 移籍後も苦しんでいた。故障離脱した荻野貴司の代役を期待され、井口資仁監督は移籍直後から5試合続けてスタメンで起用するも、この日の試合前まで19打数1安打、2つの盗塁死。環境の変化も奏功することなく、昨季から続く打撃不振はさらなる泥沼にはまろうとしていた。

 井口監督が「みんなが見たいトレード同士の対戦」と振り返ったように、相手先発が藤岡というシチュエーションでなければ、5試合ぶりのスタメンというチャンスは訪れなかったかもしれない。そうした意味では、最後まで目を掛けてくれていた恩師・栗山英樹監督がもたらしてくれたチャンスだったとも言える。

 そして、そのチャンスを生かした。瀬戸際の状況で、これ以上ない形で“らしさ”を見せつけた。相手チームにかかわらず観客席から送られた拍手と歓声からも、岡が北海道のファンにどれだけ愛され、期待されていたかが分かる。新天地で真価を発揮していくのは、まだこれからだ。

文=杉浦多夢 写真=毛受亮介
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