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2018甲子園

金足農2ランスクイズ成功、もう一人の“立役者”

 

ホームイン後、冷静に行動


近江との準々決勝。9回無死満塁からのスクイズで金足農の三走・高橋はヘッドスライディングで同点の生還後、すぐに立ち上がって、本塁を空けている。この迅速な行動により、2ランスクイズが決まった


2018年8月18日
第100回=準々決勝
金足農(秋田)3x−2近江(滋賀)

 2018年夏、最高の名勝負である。金足農は近江との準々決勝で、1点を追う無死満塁からの2ランスクイズでサヨナラ勝ち(3対2)した。34年ぶりの4強進出である。

 金足農・中泉一豊監督が「チームで一番バントの精度が高い」とスクイズバントを相手三塁手前へ転がした斎藤璃玖と、二塁から「チームでは足の速いほう。彼の判断」(同監督)でヘッドスライディングした菊地彪吾の好走塁が、クローズアップされている。

 しかし、冷静に見てみるともう一人、立役者がいた。三塁走者・高橋佑輔である。スクイズで生還すると、すぐさま立ち上がって、本塁を空けている。本来ならば、同点のホームであり、その場で喜んでもおかしくない。しかし、高橋は先のプレーを見ていた。つまり、2ランスクイズを察知しての行動だったのだ。

 写真を見ても、高橋はしっかり、二走の動きを確認していることが分かる。

 高橋は横浜との3回戦で値千金の逆転3ランを放ち一躍、ヒーローとなった。準々決勝前に「自分は調子に乗るほうなので、昨日は昨日で終わったこと。今日は今日で切り替えています」と語っていたとおり、この試合では影の立役者となった。

 1点ビハインドの9回裏、高橋は先頭打者で左前打と、甲子園を金足農の応援一色にしたのは紛れもなく、高橋のバットだった。

 自ら「調子に乗るタイプ」と言うように、ユニークな球児である。過去の失敗談を告白してもらうと「練習試合で10試合以上連続でヒットを打っていたので、ちょっとだけ眉毛を剃ったんです。そうしたら、怒らてしまって……そしたら、25打席ノーヒットでした」。

 さらに、話は発展する。

「実はもう1回、ありました。ウチの野球部では大会前の『髪切り日』というのがあるんですが4月、そこでも少し手を加えたら、見つかってしまいまして……。でも最後の夏、野球の神様が見ていると思い、すべてを正しました。そうして今にたどり着きました」

 夏の秋田大会前に部員50人全員で五厘刈り。すでに1カ月以上が経過しており、だいぶ、髪の毛が伸びてきた。

「自分、くせ毛なので、朝になると、髪が立っているです。セットが大変(苦笑)。でも、昔からの伝統なので、自分だけ切るわけにはいかない」

 金足農は34年ぶりの準決勝進出。全国3781校で勝ち残ったのは4校である。泣いても笑っても最大残り2試合。髪の毛の手入れが大変だということは、勝ち残っている証と、高橋は喜んで準決勝を迎える。

文=岡本朋祐 写真=高原由佳
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