金足農・吉田(左)は侍ジャパンU-18代表の初練習に参加。注目度は高まるばかりだ(中央は大阪桐蔭・根尾、右は大阪桐蔭・藤原)
「輝星フィーバー」は収まりそうな気配がない。高校日本代表の初練習。テレビカメラ8台、スチールカメラ約10台、30人ほどの記者は一人の右腕の動きを追いかけていた。
今夏の甲子園準優勝投手の金足農・
吉田輝星は前日、8月24日に東京入り。U-18高校日本代表は翌25日に集合し、9月3日に宮崎で開幕するアジア選手権2連覇へ向けてスタートを切った。
吉田は秋田大会5試合で749球、甲子園6試合で881球を投じた。高校日本代表を率いる永田裕治監督は、蓄積疲労を配慮した。
「あれだけ投げている。練習途中でも、本人は『やりたい』と言うが、こちらが抑えて、抑えて……。今の状態では、東京の間はゆっくりさせようかな、と思っています」
この日は選手18人の中で、1人だけ別メニュー。理学療法士による入念なマッサージに、多くの時間が割かれた。大きな動きはなかったが、報道陣は一挙手一投足を見逃すまいと、目を凝らして吉田の練習を見守った。
「大会も一段落して、疲れも抜けてきている。トレーナーさんの力も借りて、良い調整ができている。徐々に負荷をかけて、野球ができる動きにしていきたい」と、練習後に吉田は前向きに語った。
プロも注目する大阪桐蔭・
根尾昂、
藤原恭大、報徳学園・
小園海斗と「超高校級集団」の中でもやはり、吉田の注目度の高さは際立っていた。各テレビ局は女子アナを投入し、ワイドショーまでが取材を展開していた。
こうした光景は2006年夏、「ハンカチ王子」で社会現象となった早実・
斎藤佑樹を見るかのようだった。吉田は卒業後の「進路」を明言しておらず、進学かプロの二者択一だった12年前の「佑ちゃん」と同じようなシチュエーションである。
甲子園での2週間で、周囲を取り巻く環境が一変したわけであるが、吉田はどうとらえているのだろうか。
「注目される分、人の手本となるような行動をしないといけない。成長できる」
具体的には、これまでよりも、積極的にあいさつをするように心がけているという。
「宮崎へ行ってからが本番。自分の力を出して、連覇に貢献できたらいい」
とにかく今は、焦らない。困惑してもおかしくない状況だが、17歳の吉田は冷静に自身と向き合っている。
文=岡本朋祐 写真=井田新輔