週刊ベースボールONLINE

U-18侍ジャパンリポート

吉田輝星が代表デビュー 矢のようなボールで圧倒

 

金足農・吉田輝星は8月31日の宮崎県高校選抜との壮行試合で実戦復帰した。マウンドに上がるまでの過程には高校日本代表・永田監督(背番号30)による最大限の配慮があった


 中9日――。

 金足農・吉田輝星は8月31日、大阪桐蔭との甲子園決勝以来のマウンドに上がった。宮崎県高校選抜チームとの壮行試合、1万6000人を集めたKIRISHIMAサンマリンスタジアム宮崎は、この日一番の盛り上がり。4対2の9回裏、吉田は一塁ベンチから猛ダッシュで飛び出した。背番号16の雄姿を写真に収めようと、ファンがフェンス越しへ猛ダッシュしている。人気の高さを証明する動きであった。

 先頭打者にこそ死球を与えたが、後続を抑えて試合を締めている。自己最速に1キロに迫る149キロ。前日から「甲子園よりも状態が良い」と語っていたように、持ち味である伸びのあるストレートで三振も奪った。

 吉田はここまで神宮での大学日本代表との壮行試合を含めた3試合、代表18人で唯一、出場がなかっただけに、4戦目でようやくチームの“一員”となった。高校日本代表チームとして集合して以来、29日の東京合宿中は完全別メニュー調整が続いた。25日はノースロー、26日は約15メートルのキャッチボール、27日は60メートルまで距離を延ばし、本人の強い要望によりブルペン入りして約30球。そして28日の大学日本代表との壮行試合前には捕手を立たせたまま20球、そして、29日も捕手を座らせて30球を投げた。

 3日連続のブルペン入りは、すべて室内練習場。30日、宮崎での初練習ではジャージ姿ながら、屋外で力感あるキャッチボール。「ドリャ!!」と変化球も交えて、実戦をイメージしながら力強いボールを投げ込んでいた。

 なぜ、吉田の“代表デビュー”がここまで慎重になったのか? これも「急造チーム」の難しさである。「念には念を入れたい。つぶすわけにはイカン」と、高校日本代表チームを率いる永田裕治監督としては、最大限の配慮をした。自チームの選手ならば、体調を把握できるが、今回は「選手を預かっている身」であり、難しい判断に迫られていたのだ。

 指揮官が「大丈夫か?」と聞けば、選手は「大丈夫です」と答えるのが常である。別メニュー期間中は理学療法士、アシスタントコーチが吉田を付きっきりでサポート。永田監督はこまめにコミュニケーションを取り、状況を逐一確認し、吉田本人とも話し合いを重ねた。

 チーム集合からちょうど1週間。吉田本人はもちろんのこと、永田監督の「我慢」こそが、「復帰登板」として結実したのである。

 空振り三振に打ち取られた宮崎高校選抜の主将・富永康介(宮崎北)は目を丸くさせた。

「外野から矢のような送球、とよく言いますが、吉田投手のストレートは矢のようなボールでした。伸びあがるような球。初めての体験でした」

 高めの真っすぐに思わず手が出てしまったという。甲子園では「地を這うようなボール」と言われたが、低めに制球されればもう、誰にも打てない。吉田の侍ジャパンがよくやく幕を開けた。

「東京ではチームに迷惑をかけた分、(宮崎では)ゲームの結果でチームに貢献したい」

 アジアの舞台でも話題が集中しそうな気配である。

文=岡本朋祐 写真=大泉謙也
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング