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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

日大三高・日置航が大事にした“間”

 

日大三高の日置航主将(右)。遊撃守備ではマウンドの投手の下へ歩み寄り声をかける(写真左は河村唯人)。間を大事にしているのは、プレーの至ところから垣間見られた


 これも野球の一部。今夏の甲子園で、あらためて、そう感じさせるプレーがあった。

 1日4試合。連日の猛暑日も、今夏も例年どおり甲子園の日程は消化された。開会式では給水タイムが設けられ、試合中も選手たちがベンチに引き揚げて水分補給をとるなど、熱中症対策が行われた中でも変わらないのがスピーティーな試合進行だ。

 今夏に行われた55試合の1試合平均時間は約2時間9分。初出場校の監督、選手たちは試合後「あっと言う間に終わった」と口をそろえ、常連校の面々は「気がつけば試合は中盤に入る。それが甲子園。だから序盤の入りを大事にしたい」と語ることも多い。

 過密日程を消化するうえでは、仕方ない部分もある。ただ、激戦の地方大会を勝ち抜きたどり着いた夢舞台。鍛錬の成果を発揮し、悔いなくプレーしたいのは共通の思いだろう。

 だから、スピーディーな試合進行の中でも“間”は重要ではないだろうか。ピンチの場面でマウンドに集まるのも、そのひとつだが、打者では自ら頭を整理する時間を取りたいこともあるはず。それも駆け引きであり、野球の一部とも言える。

 その中で光るプレーが龍谷大平安高と日大三高の3回戦にあった。3対3で迎えた7回裏。二死三塁で打席に日大三高の大塚晃平が入ると、2球続けてストライクを奪われ、あっという間に追い込まれた。すると、三走・日置航主将が、スパイクのヒモを結び直すためにタイムを要求。間を設けたのだ。

「テンポ良く投げられて、低めのボール球を見極められていなかったので。ひと呼吸というのもあったんです」

 結果は三飛で得点には結びつかなかったが、打者・大塚の気持ちを落ち着かせるための行動だった。

 ただ、“正式なタイム”の要求は1試合3度まで(延長は1イニングに1度)と定められており、手放しで称えられる行為ではないのも事実。とはいえ、打者が自ら“間”を取るためのタイムを取りやすい環境であるならば、日置主将も、こうした行動を起こす必要がなかったのではないだろうか。

 投手の球数制限や熱中症対策のため、試合開始時間の変更案などが飛び交う夏の高校野球。「選手ファースト」の声が挙がる中、大切なのは何をすべきかの前に、選手たちが悔いなく戦える舞台を整えることだろう。日大三高・日置主将の何気ない行動から、勝負どころでは、選手自ら“間”を設けやすくする必要もあるのではないかと感じさせられた。

文=鶴田成秀 写真=BBM
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