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U-18侍ジャパンリポート

アジアの頂点へ高校日本代表・永田監督は「球数制限」とどう向き合うか?

 

今大会で新たに適用


高校日本代表を率いる永田監督。今回のU-18アジア選手権(宮崎)で新たに適用される「球数制限」におけるさい配が注目される


 9月3日に開幕したU-18アジア選手権(宮崎)で高校日本代表を率いる永田裕治監督は、手の内を絶対に明かさない。報徳学園高(兵庫)の選手時代にはエース・金村義明氏と挑んだ3年夏、右翼手として甲子園全国制覇を経験。また、母校監督としても94年から17年春のセンバツまで率い、春夏計18度の甲子園出場で、2002年春には優勝へ導いている名将だ。

 百戦錬磨の指揮官だけに、報道陣から投手起用や打順を問われても「(宿舎に)帰ってから考えます」と一切、具体的な話には触れない姿勢を一貫している。

 唯一、悩みを打ち明けたのは、今大会から導入される「球数制限」である。大会規定にはこう、書かれている。

▼1〜49球(休息なし)
▼50〜104球(1日の休息)
▼最大105球(4日の休息)

 補足説明を加えると、最大の球数は「105球」で、この数字に達すると4日間の休息が義務づけられる。また、「50球」に達した場合は「中1日」(球数が上限に達した場合は、その打者との対戦が終わるまでは可能)。49球までなら、翌日の登板も可能であるが、さらに1球でも投げれば、「中1日」を空ける必要がある。

 仮に104球で降板しても「50球」を超えているから、「中1日」を空けなければならない。また、初日に15球、2日目に20球の場合は50球に達していないので、3日目も登板可能。ただし、球数にかかわらず、3日続けて登板した場合は翌日の「4連投」は認められない。

 今大会の場合、一次ラウンドが9月3日から3日間あり、休養日(6日)を挟んで、7、8日がスーパーラウンド、9日が決勝・3位決定戦という日程が組まれている。つまり、このルールの球数制限内であれば「3連投」の後に「3連投」も可能という計算になる。

 さて、永田監督は2004年の第21回AAA世界野球選手権大会(台湾)、05年の第6回アジアAAA野球選手権大会(韓国)で高校日本代表チームのコーチを2度務めた実績がある。05年当時をこう回想する。

「1戦目は辻内(崇伸、大阪桐蔭)が先発、2戦目は辻内が完封、3戦目を空けて、4戦目も辻内が10回完投……。すごかったな、と」

 辻内は4日間で3試合を投げ、完封と完投はいずれも宿敵・韓国戦だった。今大会も韓国とチャイニーズ・タイペイを交えた「アジア3強」による金メダル争いが予想されるが、「その野球とは根本的に変わる。球数制限があるので、今までの大会とはまったく違う」と、永田監督は危機感を募らせている。

“2つ”を見極めながら


「(東京、宮崎での計4試合の強化試合では)1イニングで30球を投げているピッチャーもいた。50球だと中1日。105球を投げてしまうと、4日間、投げられなくなって、大会が終わってしまう。難しいですよ……」

 選手たちへ「球数制限」の話をしたのは、開幕前日(9月2日)のミーティングが初めてだった。「高校生は必死ですから、こちらが判断する」と、余計な気を使わせない配慮をしてきたという。しかし、実際に投げるのは選手自身だ。いくら「気にするな。全力でいけ!!」と言われても「球数制限」を念頭に置かずにマウンドに上がるのは、難しいだろう。

 投手起用について、これまでの国際大会ならば、ある程度のシミュレーションを描いていくものであるが、永田監督は「2戦目以降は、決めていない」と話す。「予選(一次ラウンド)、決勝(スーパーラウンド、決勝)とは違う。相手を見て」と、球数と選手のコンディションの2つを見極めながらのさい配が続く。

 高校野球界でも昨今「分業制」が叫ばれているが、「先発完投」や「連投」の精神も根強く残っているのも事実。今夏の甲子園で準優勝を遂げた金足農の快進撃も、秋田大会5試合、甲子園6試合を通じてほぼ一人で投げてきた吉田輝星の快投をなくしてあり得なかった。

 史上初となるU-18アジア選手権2連覇を目指す高校日本代表。永田監督は「球数制限」という新たに適用されたルールの中で、一つの指針を示す舞台となる。

文=岡本朋祐 写真=大泉謙也
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