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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

3連覇へ前進する広島ナインに浸透するメンタル

 

決してあきらめないナイン


8月31日のヤクルト戦(神宮)で決勝弾を打った丸佳浩


 広島がチーム初の3連覇に向け、どんどんマジックを減らしている。8月27日時点ではマジック22だったが、そこから巨人に3連勝、さらにマジック対象チームのヤクルト相手にも3連勝して、あっという間にマジックは13となった(9月3日現在)。

 もはや敵なしといった感じの強さだが、この強さはどこから来るのか。数字を見れば、防御率は4点台で、そういいとは言えないので、やはり打線で勝っている印象が強い。そしてその打線の強さを生んでいるものは、といえば、何といってもこのチーム独特の、いい意味での「あきらめの悪さ」だろう。とにかくこのチームは、イニングが何回で、何点差であろうと、ゲームをあきらめるということがない。そして実際、とんでもない逆転勝ちをいくつもしているのだ。

 ざっと思いつくものだけでも、5月30日の西武戦(マツダ広島)では、同点で延長戦に入って10回表に3点取られながらその裏に4点取ってサヨナラ勝ち、7月20日の巨人戦(マツダ広島)では7点リードを追いつかれた挙げ句の延長10回表に1点取られながら、その裏二死から下水流昂がサヨナラ2ラン、その2日後の巨人戦(同)では0対6から逆転勝ち、8月23日のヤクルト戦(マツダ広島)では3点差の9回裏に丸佳浩が同点3ラン、続く鈴木誠也がサヨナラ弾。8月31日のヤクルト戦(神宮)では7回終わって4点差から逆転勝ち……といった具合だ。

 トーナメント制で戦う高校野球なら、残りが何イニングで何点差であろうとあきらめない、というのもうなずけるが、リーグ戦方式で戦うプロ野球で、これほど「あきらめの悪いチーム」というのは、少なくとも筆者は見たことがない。

 強いて言うなら、真弓明信、バース、掛布雅之岡田彰布を擁して優勝した1985年の阪神がちょっと似たムードを持っていて、ゲーム前半のピンチなどでは「どうせ逆転できるから、1点ぐらいやってまえ」と話していたと聞いたことがあるが、まあこれは精神的なタフさというより、自らの打線への自信を物語る部分が強いエピソードだろうか。

 とにかくこの、あきらめない姿勢が、お題目にとどまることなく、主力から控え選手まで浸透しているところが、カープの強さの大きな要因の一つだ。主力選手も「何点差あってもあきらめない」ことを当然のように口にするし、また実際、逆転勝ちを数多く実現させていることで、さらにその気持ちが育つ、という部分もあろう。

 そして、カープの選手のメンタリティーを考えるうえで、もう一つ見逃せないのが、チーム内の競争原理だ。今季、このチームでは、「ケガさえなければ居場所が確保されている」のは、丸と鈴木だけだ。菊池涼介田中広輔でさえ、守備の定位置は保証されているが、打撃の調子によっては、一番、二番の打順を外される。これまでの連覇の主力も安心はできないのだ。

緩みを排除して常に漂う緊張感


 若手もそう。今季、3割を打ってブレークした野間峻祥も、今は完全に定位置をつかんだ感じになっているが、好調なときでも、松山竜平バティスタがレフトのスタメン、ということは少なくなかったし、3割を超える打率をマークしているサードの西川龍馬も、安部友裕が調子を上げたときにはスタメンを失い、現在も相手投手が左だと小窪哲也のスタメンもあり、と、安穏とした状態にはまったく置いてもらえないのだ。この起用法が、選手から緩みを排除し、常に緊張感を持たせていることも見逃せない。

 また、この起用法によって、レギュラー以外の野手も起用されたときには集中力を増して活躍することになる。8月29日の巨人戦(東京ドーム)で五番に入って逆転3ランを打った新井貴浩しかり、最近、相手が左腕先発のときにサードに入って好打を見せる小窪哲也しかり。さらには鈴木誠也の休養日となった8月30日の巨人戦(同)では代わりに外野に入ったバティスタがホームラン、といった具合だ。

 もはや3連覇は、逃すことはよもやないところまできた。これからは、昨年悔しい敗戦を喫したCS、そこを勝ち抜けば一昨年に敗れた日本シリーズといったポストシーズンの戦いが待つ。そこではまたメンタル的にも新たな局面に立たされることになるが、そこでカープの選手たちがどういったメンタルで勝利へ向かっていくか、また首脳陣がどういう采配で選手の力を引き出そうとするか、にも注目してみたい。

文=藤本泰祐 写真=BBM

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