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【MLB】「300勝」はスタットキャスト時代も夢の数字!?

 

35歳で200勝に到達したバーランダー。野球殿堂入りには300勝が大きな目安になるが、現代の野球ではいろいろと難しい状況がある。その価値観の変化の中で300勝に行かずとも、殿堂入りの可能性は高そうだ


 アストロズのジャスティン・バーランダーが通算200勝を挙げた。MLB史上114人目である。試合後、同僚ゲリット・コールの音頭で、シャンパンシャワーでお祝い。

「節目の数字に到達すると、これまでの自分のやってきたことを思い返して、しみじみとした気分になる。21歳から今(35歳)まで長い旅だね」と笑顔で振り返った。

 とはいえ今季も12勝8敗、防御率2.65で、2連覇を目指すアストロズのエースとして投げている。これで終わるつもりは毛頭なく40代でも投げたいという。そこで期待されるのが次の300勝投手になることだ。かつて300勝は投手の殿堂入りの目安と言われた。

 現在、現役最多勝はレンジャーズのバートロ・コロン、45歳で247勝、2位は38歳のヤンキース、C・C・サバシアで244勝。しかし2人とも、年齢やケガを考えると、この先長くない。バーランダーに続くのは34歳のザック・グリンキーの184勝と同じく34歳のジョン・レスターの172勝など。

 彼らは依然エース格だが、実際のところ、300勝の大台は今の野球では誰であろうと難しい。最後の300勝投手ランディ・ジョンソンは1999年シーズン35試合に先発し、271.2 回を投げ、12試合に完投したが、最近ではそういった起用はありえない。

 特にこの2016、17年はブルペン投手を次々につぎ込む戦法が普通になり、先発で200イニングを投げる投手も激減した。早く代わるということは勝ちが付くチャンスも減る。昨季は20勝投手が一人も出なかった。加えて、最近のメジャーでは、投手の勝ち星はその選手の価値を正しく示すものではなく、勝ち星をありがたがるのは時代錯誤と見なされている。

 そこで注目なのは今年のナ・リーグのサイ・ヤング賞の行方だ。現時点でメッツのジェイコブ・デグロムは防御率1.71でダントツ1位である。しかしながら打線の援護に恵まれず8勝7敗。一方でナショナルズのマックス・シャーザーは防御率2・11だが、16勝5敗と最多勝だ。 

 10年、13勝のフェリックスヘルナンデスが、イニング数と防御率でほかを圧倒し、19勝のデビッド・プライス、21勝のサバシアを制して賞を得たことがあり、投手の評価基準が大きく変わったと話題になった。

 あれから8年、今年のデグロムの得票はどこまで伸びるのか。ちなみにシャーザーはイニング数が174.2回でデグロムが168回、奪三振数も234対204でデグロムを上回っている。最近ではペドロ・マルティネスが219勝、ジョン・スモルツが213勝と、「300」に遠く及ばなくても殿堂入りを果たした。

 マルティネスはサイ・ヤング賞3度、防御率タイトル5度と球界のエースとして君臨した時期が長かった。スモルツは先発投手でサイ・ヤング賞に輝き、リリーフ投手としてもセーブ王1回と両方で活躍した。バーランダーはスタットキャスト時代のスーパースターで、フォーシームの回転数など最先端のデータでズバ抜けている。彼が「300」に届けば素晴らしいが、そうでなくても、価値を科学的に見極めてもらう時代に変わっていくに違いない。


文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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