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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

胸を打った日本ハム・谷口雄也の言葉

 

飾らない言葉で北海道への思いを語った谷口


 胸に秘めた思いが詰まった一打だった。

 9月6日のイースタン・リーグの日本ハムDeNA戦(鎌ケ谷)の5対5で迎えた8回裏一死一塁、打席には日本ハムの谷口雄也。「ここで絶対に決める……」と狙いすました力強いバッティングで国吉から右中間を破る決勝の三塁打を放ち、ベース上で会心のガッツポーズ。普段はあまり感情を出すタイプではないが、自然とそうさせてしまう胸を痛める出来事があった。

 この日に最大震度7の地震が北海道を襲った。多くのファン、また選手や関係者の家族もライフラインがストップし、不安な時間を過ごしていた。それだけに谷口にとっても、またほかの選手たちにとっても「特別な感情」を抱きながらのプレーボールだった。いつも奇抜な衣装で球場を盛り上げるDJチャス。もこの日は自粛され、いつもの鎌ケ谷とは違う中でのゲームとなった。

 試合後の谷口のヒーローインタビュー。ひとつ大きな息をついて「今日の朝方、北海道で地震がありました。僕たち北海道のチームが、遠く離れたところで野球をやっていてもいいのかなって正直僕は朝に思いました。いまも余震やライフラインがなかなか戻ってない中で、それでも……いま僕たちができることは、この鎌ケ谷からファイターズの選手が頑張っているんだぞって見せることなのかなと。北海道を僕らのプレーで元気づけたいという思いがあった試合でしたし、これからも一緒に頑張っていきましょう」。

 このスピーチにスタンドでは涙を流すファンもおり、温かな雰囲気の中でこの日のヒーローに大きな歓声と拍手が送られた。

 球場で谷口の言葉を聞きながら、あらためて自分自身も考えさせられたスポーツの力、野球の力。いまプロ野球球団にできることは何なのか。今日の試合(9月8日)で一軍で先発登板(楽天戦=KOBO生命パーク)する上沢直之も「こんなときに野球をやっていていいのかなという思いも正直ある。ただ僕らは野球で何かを伝えていくしかない」とコメントしていたが、北海道で育まれてきたチームだからこそできることはある。

 一軍だけでなく、二軍で懸命に汗を流す選手たちも北海道への思いは同じ。ファンに希望の光と笑顔を届けるため、道民球団・北海道日本ハムファイターズが大きな試練を乗り越え、逆転Vへ向けたシーズン最終盤の戦いへと歩みを進める。

文=松井進作 写真=BBM
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