週刊ベースボールONLINE

U-18侍ジャパンリポート

名将が高校日本代表に示した打開策

 

永田監督との絆


高校日本代表・永田監督(左)の要請により、渡辺氏(右、横浜高前監督)が激励に訪れ、選手たちに熱血指導した。約2時間にわたり、有意義な時間となった


「もう少し、肩の力、抜いていけよ!!」

「ありがとうございます!!」

 そんな会話が聞こえてきそうである。第12回BFA U18アジア選手権(宮崎)に出場している高校日本代表チームは9月8日、中国とのスーパーラウンド第2戦が雨天中止。すでに9日、中国との3位決定戦が決まっており、スーパーラウンドは「打ち切り」となった。

 中国は練習をキャンセルしたのに対し、日本は約2時間、最終戦へ向けて調整した。

 木の花ドームには“臨時コーチ”が熱血指導。永田裕治監督は、テレビ解説で宮崎入りしていた渡辺元智氏(横浜高前監督)に、この日の指導を要請したのだった。2004年の第21回AAA世界野球選手権(台湾)で渡辺氏が高校日本代表監督、永田監督が同コーチという間柄。不慣れな海外で、同じ釜の飯を食べた絆は固い。以降も親密な関係が続いており、渡辺氏も永田監督からの依頼を快諾した。

 すでに前日のチャーニーズ・タイペイで惜敗したことで、日本の大会連覇は消滅。地元開催で力を出し切れなかった現実に、渡辺氏は独自の視点から打開策を示していた。

「心構え。怠けているのではなく、ちょっとした『ズレ』がある。大学との壮行試合(8月28日、神宮)も見に行きましたが、あのあたりでピーク。以降、コンディションが下がってきている中でスリランカ戦を迎え、(現実との)錯覚が出てきた。そこにタイミングにおける『間』が取れなくなり『ズレ』が生じてきたんです」

 渡辺氏は過去3回、U-18代表(1995年アジア選手権、2004年世界選手権、11年アジア選手権)を率いた経験から、投手、野手に対して的確なアドバイス。甲子園通算51勝を誇る名将の指導は分かりやすく、メンバーにもすぐに浸透。韓国、チャイニーズ・タイペイとの2試合で計4失策の報徳学園・小園海斗は、基礎、基本を再認識し「良い練習になりました」と、笑顔で振り返っている。

 選手にとって有意義な時間となったわけであるが、実は、永田監督にとっても束の間のリラックスタイムとなったに違いない。8月25日のチーム結成以降、写真のような笑顔を見せたことは一度もなかった。どこの世界でも、「監督とは孤独」と言われる。すべての責任を背負って選手を起用し、さい配するのは、想像を絶するプレッシャーがかかる。日の丸を背負っているのだから、なおさらだ。

 激励に訪れた渡辺氏。チームを率いた者にしか理解できない“苦悩”を共有できるからこそ、永田監督からすれば、これほど、ありがたいことはなかったはずだ。そこに、多くの言葉は必要ない。その場にいるだけで、良かった。中国との3位決定戦を控える指揮官にとっては、心が安らぐひとときになった。

「何とか3位を死守したい。今日の練習が明日につながる。何が何でも勝ちにいく」

 練習後の記者会見では勝負師の目に戻っていた。

文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング