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U-18侍ジャパンリポート

吉田輝星も驚いた!? 高校日本代表でも、やはり根尾さんは違った!

 

あまりの自覚の高さが……


根尾は中国との3位決定戦で自己最速を1キロ更新する150キロをマーク。1イニングを三者凡退で、7回コールドで試合を締めている


 第12回BFA U18アジア選手権(宮崎)で高校日本代表は、中国との3位決定戦を制して、銅メダルを獲得。来年に韓国で開催予定のU-18W杯の最後の出場1枠を獲得しているが、目標は「史上初の連覇」だっただけに、18人メンバーは誰一人として満足していない。

 今大会、3つのグラブを持ち込んで、右翼手、投手、遊撃手、そして、不動のクリーンアップとフル回転した大阪桐蔭・根尾昂も3位という結果に、悔しさをにじませた。

「最悪の最悪。最低限のことは果たせた」

 高校日本代表を率いた永田裕治監督は、3位決定戦を前に、チームの合言葉として「次世代につなぐ」と伝えていた。2年生以下に来年、世界舞台で戦うバトンを渡すことができた事実を受けての根尾の言葉だった。

 根尾はチーム内で、親しみを込めて「根尾さん」と呼ばれている。金足農高・吉田輝星は冗談交じりにこう明かした。

「根尾? 真面目ですが、野球をやっていないときは変人です(苦笑)。部屋に入ってみたら、扉の目の前で体幹(トレーニング)をしていた……。行動がおかしいんです(苦笑)」

 このエピソードを鵜呑みにしていけない。このコメントの裏には、先々を読んだ行動の早さがある。

 すべては準備――。それは、甲子園から見受けられた。勝利の校歌を歌って、アルプスへあいさつ。ベンチへ戻る猛ダッシュは、カメラマンも追えないほどの超スピードだという。次への行動を移すのがとにかく、早いのである。大会中盤の「休養日」に開かれた焼き肉店での決起集会では、冒頭の10分間が報道陣に公開された。根尾の席は炊飯器から遠かったのにもかかわらず、すぐさま立ち上って、ゴハンの配膳を率先していた。これまで見たことのなかったあまりの「自覚の高さ」が、吉田には「変人」と見えてしまったようだ。

 しかし、一連の行動の早さが、野球における万全の準備にもつながっているのは、言うまでもない。

 大人からも認められた優等生である。永田監督は「選手間でも一目、置かれている」と明かす。さらに指揮官は「必ず人の目を見て話し、あいさつする。根尾で負けたらしゃあないという気持ちにさせてくれる」と、人格に惚れ込んでいる。それが、3年生の同級生であっても「根尾さん」と呼ぶ理由なのだ。

アンリトン・ルールも熟知


 中国との3位決定戦では、最後に魅せた。14対1の7回表から3番手として救援すると、三者凡退で試合を締めている。2人目の打者は自己最速を1キロ更新する150キロで空振り三振。9月30日に開幕する福井国体(公開競技)を残しているが、高校最後の“真剣勝負”で大台突破とは、永田監督の言葉を借りれば「持っている男」としか言いようがない。

「150キロを目標にしていたわけではないですが、ただ、うれしいです。指にかかっていたので、投げた瞬間、後ろを見ました。チームメートが『ナイスピッチング!!』と言ってくれましたが、そんなにすごくない。もっと、良いピッチャーがいましたので……」

 150キロよりも、驚いた発言があった。根尾は「アンリトン・ルール」(大会規約には記載されていないが、相手を侮辱する行為は、マナー違反の観点から暗黙の見解として固く禁じられている)を熟知していたのだ。

「(7回は)相手も真っすぐがくると思っていたようなので、力でいきました。(点差が広がっているので)決まり事だと思います」

 明らかにレベルの差が大きかったり、スコア上、大差がついたりした際には、変化球を投げない。ストライクゾーンで、真っ向から勝負する。それが、対戦相手へのリスペクトなのである。国内合宿から指導を受けてきたことを頭で理解し、行動に移すのだから並の高校球児ではない。やはり、根尾さんは違った――。

 18歳にして、この冷静さと落ち着き。好きな選手を「イチロー」と言うだけあって今後、根尾も唯一無二の存在になりそうな気がする。卒業後はプロ志望を表明しているが、打撃、投球、守備、走塁とすべてを極めていきたいという。プレーにとどまらず、実直な性格は、底知れぬ可能性を秘めている。

文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎
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