ルールは公平であるべきだ
セ・リーグは緒方監督率いる広島が独走で3連覇を達成しそうだが……
今年のセ・リーグは広島の優勝で決まりだろう。カープのバッターで感心するのは、来たボールに対して逃げないことだ。ほかの球団に関しては、外野手出身の監督はどちらかというと欠点が見えることを現在の順位が物語っている。
高橋由伸監督、
金本知憲監督ともに今年で3年目だが、もう一度、野球とは何かということを勉強し直したほうがいい。仮に不振の責任を取らされて後任に代わる場合、なぜ俺が……と嘆いても始まらない。そのときに、責任は自分にあるのだということに気がついて勉強すれば、再び這い上がる機会は訪れる。“負け戦”とどう向き合うか。それは彼らの意識の持ちようにかかっている。
では、
巨人や
阪神に次の監督候補がいるかというと前回も書いたとおり、勉強する場が日本にはない。自分で勉強しようという意欲もない。(監督要請の)お呼びがかかったら「さもあらん」というのが日本人だ。巨人などは指導者を二軍からスタートさせて人を育てることを覚えさせた上で、優秀な選手を作ったという実績を手形に、一軍の監督・コーチにすべきなのだ。それこそが革命である。かつてスーパースターだったからという理由で監督に起用する従来の路線を踏襲していたら、同じ結果の繰り返しになってしまう。そうではなく、ウチはこういう勉強をさせた上で監督にするという方針を打ち出すべき時期に来ているのだ。
そんな巨人にもクライマックスシリーズ(CS)で一発逆転のチャンスを与えられるのが今の日本球界だ。
ヤクルトもそうだが首位・広島に10ゲーム以上離され(9月12日現在)、直接対決でも11も負け越し。これがたった一つのアドバンテージで相殺され、2位、3位チームにも日本シリーズ出場の権利が得られるというシステムは間違っている。
これでは、1年間レギュラーシーズンを必死になって戦って1位になった意味がない。シーズンを通して毎日球場に足を運んで応援してきたファンの心情はどうなるのか。去年の広島は連覇したにもかかわらずCSで
DeNAに敗れた。今年もそのテツを踏まないとも限らない。
ルールというのは公平であるべきだ。CSという制度が果たして公平といえるだろうか。
ある球団オーナーなどは「消化ゲームがなくなり最後までファンが応援してくれるからうれしい」と肯定しているが、いつまでもファンが応援してくれると思ったら大間違いだ。
MLBの平等の精神
メジャー・リーグのルールは、平等の精神がその根底にある。たとえば、シーズン開幕時点で強弱の差が顕著だと観客に魅力あふれる野球を提供できない。そこでドラフトで戦力の均衡が図られる。前年の成績が悪い順に指名権が与えられる完全ウエーバー制や、FAで大物選手を獲得した球団は供給源になった球団に指名権を譲渡するなどの措置が取られる。平等ということを考えると、このシステムは正しい。
そういう球界全体の底上げをせず、目先の観客動員という損得勘定によってルールが作られるのが日本の現状だ。邪道としか言いようがない。1位にならないと意味がないという制度にすればいいのだ。
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広岡達朗(ひろおか・たつろう)
1932年2月9日生まれ。広島県出身。呉三津田高、早大を経て54年に巨人入団。大型遊撃手として新人王に輝くなど活躍。66年に引退。広島、ヤクルトのコーチを経て76年シーズン途中にヤクルト監督に就任。78年、球団初のリーグ制覇、日本一に導く。82年の
西武監督就任1年目から2年連続日本一。4年間で3度優勝という偉業を残し85年限りで退団。92年野球殿堂入り。
写真=BBM