今年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。 映画「勝利の旗」を訴える?
今回は『1964年3月16日号』。定価は40円だ。
少し迷ったが、表紙に書いてあるから仕方がない。
大した内容ではないが、一応、未成年の方はご遠慮いただきたい。
国鉄・
金田正一の連載「プロ野球なで斬り帳」の一節だ。
ワシは医者に聞いたり、本で読んで研究したが、正常なセックスの処理は、ちっとも体力に響くものではない。それがあったから、きょう投げられんとか、打てんとかいうものではない。
それよりも不自然な処理とか、悪いことをしたと、精神的にあれこれ気をもむほうがいけない。それだけマイナスになる。自信がぐらつくのや。
だからパッと割り切って発散してしまえばいい。そんなに試合にさしつかえるものじゃない。
いけないのは女に溺れることだ。石部金吉といわれるような堅い人がかえってそういうふうになりやすい傾向があるが、こういう人が女を覚えると、夜も寝られず、球場へ行っても上の空という状態になる。
かなり一般週刊誌っぽくなっている号で
「訴えられた映画“勝利の旗”」という記事もあった。
これも要するに「訴えるくらい怒っている選手がいる」という話だ。
「勝利の旗」は
巨人軍の選手が本人役で登場し話題となった映画だが、その内容に
中日の
柿本実、
山中巽が怒っていた。
特に激怒していたのが柿本だ。
映画では巨人が中日と優勝争いを演じているのだが、その中で柿本が王貞治にホームランを打たれ、長嶋茂雄にヒットを打たれ、その後、優勝シーンとなっていた。
柿本は言う。
「僕は昨シーズン、王に中日球場ではやられたけど、後楽園では1本も打たれてない。ましてや、あの一発で巨人の優勝が、という印象を与えるのはひどい」
実際、柿本は製作会社の東宝(初出修正)に抗議の電話を入れ、そこで「訴える」という話も出たらしい。
担当者もまた、中日球場で投げている柿本の投球シーンの後に、王が後楽園でホームランを打っているシーンをつないだことを認め、平謝りし、訴訟とはならなかったようだ。
では、また月曜に。
あ、今週は休日なので火曜に。
<次回に続く>
写真=BBM