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タイトル争う選手をしのぐ、広島・バティスタの驚異のホームラン率

 


 得点力で他のセ・リーグ球団を圧倒し、球団史上初の3連覇も目前というところまできた広島。その強力打線の中で、まだレギュラーとは言えないが、忘れてはならない大きな働きをしているのが、支配下登録2年目、ドミニカ共和国のカープアカデミーから育ったサビエル・バティスタだ。

 その魅力は、何といっても長打力だ。昨シーズン3月に育成契約、6月に支配下選手登録され、すぐ一軍登録されると、6月3日のロッテ戦(マツダ広島)で、初打席で初ホームラン。さらに翌4日の同カードでも代打ホームランを放ち、「デビューから2打席連続代打本塁打」という、村上信一(阪急)が1984年に記録して以来2度目の珍しい記録でデビューを飾ったのをご記憶の方も多かろう。

 今シーズンは、9月20日現在、24本塁打。チームがマジック減らしに入ってからも、9月2日のヤクルト戦(神宮)では初回に二死一、二塁から先制の3ラン。16日のヤクルト戦(神宮)でも、初回に1点を先制した後、なお二死一、二塁から、一気にゲームの主導権を引き寄せる3ランと、その長打力でチームに白星をもたらしている。

 とにかくすごいのは、そのホームラン率だ。ちなみに昨年も、143打席(125打数)で11本塁打を放っているので、13打席(約11.4打数)に1本となり、その率が高いことは示されていたのだが、今年は打席数が増えたにもかかわらず、さらにそこに磨きがかかっているのだ。

 今年のバティスタはというと、9月20日現在、278打席(251打数)で24本なので、約11.6打席(約10.5打数)に1本ということになる。

 これだけではどのぐらいすごいかが分からないので、セ・リーグの本塁打王争いをしている面々と比べてみると、1本打つのに要する打席(打数)が、36本でトップの丸佳浩(広島)が約13.9打席(約10.6打数)、35本の筒香嘉智DeNA)が約15.0打席(約12.9打数)、33本のバレンティン(ヤクルト)が約16.6打席(約14.2打数)、山田哲人(ヤクルト)が約17.7打席(14.5打数)、30本の鈴木誠也(広島)が15.6打席(12.7)打数、という具合だ。四球の多い丸がほぼ同打数だが、バティスタが皆を上回っている。近い存在を探すとすれば、規定打席に到達せずに33本を放っているソト(DeNA)だが、これも約12打席(11.1打数)で、バティスタのほうが上だ。

 バティスタはポジションとしてはレフトかファーストのため、野間峻祥松山竜平、さらには「引退興行中」の新井貴浩とライバルが多く、なかなか先発出場の機会に恵まれていないが、ずっとスタメン起用されればどれぐらい打てるのか見てみたい選手ではある。

 さらに、ファンがこのバティスタがヒーローになるのを待っている理由がもう一つ。それは、ゲーム後のヒーローインタビューだ。ここでの、いつもバティスタとコンビで出てくる、同じドミニカ共和国出身のヘンディ・クレート通訳とのやり取りが、絶妙の和ませ度なのである。バティスタ自身は別にウケを狙った発言をするわけではない(たぶん)のだが、クレート通訳が一生懸命に片言の日本語でファンに説明しようとして笑いが起こるのが楽しいようで、いつもニコニコしながら相棒を見守っているのが何ともほほえましいのだ。

 カープでは、エルドレッドがナインやファンに慕われ、親しまれる外国人選手として知られているが、今やそのエルドレッドにとって代わる存在になったバティスタもまた、今季限りで引退する新井に練習パートナーをやってもらったり、クレート通訳と2人で、磯村嘉孝にスペイン語であだ名をつけたりと、ナインやスタッフにもすっかり溶け込んでいるよう。これからの打棒にますます注目だ。(敬称略)

文=藤本泰祐 写真=BBM
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