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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

ロッテ・平沢大河の進化の秘密は“胸板”と“タイミング”

 

打球の鋭さが増し、平沢は着実に“居場所”をつかみつつある


 誰よりも早くZOZOマリンに姿を現し、黙々とバットを振る。試合が終わっても同じだ。時には井口資仁監督に直接指導を受けながら、遅くまでバットを振り続ける。重ねてきた努力の末に、ようやく誰もが認める野球センスが花開こうとしている。ロッテ平沢大河だ。

 3年目の今季こそはと狙っていた遊撃のポジションはルーキーの藤岡裕大にかっさらわれたが、開幕前から指揮官も「一番成長した」と期待を隠さなかった。シーズン途中での外野起用は、打撃面での成長が目に見えるものだったからだろう。「打撃が良ければ一軍で使いたい選手」という井口監督の言葉がその証しだ。

 6月下旬から右翼の定位置をつかむと、9月21、22日の西武戦(ZOZOマリン)では中堅も任された。「内野と違った難しさがある」と、まだまだ“外野手らしさ”という意味では物足りないが、遊撃で磨いた強肩と持ち前のセンスで無難にこなしているのはさすがだ。

 肝心の打撃面では、打球の鋭さが明らかに増した。平沢自身も「試合でもとらえられる打球が多くなっているし、打撃練習でも前より強い打球が打てるようになっている」と話す。決して大きなことをいうタイプではないだけに、確かな手応えを感じていることは間違いないだろう。

 進化の要因はまずフィジカルだ。今季は公式プロフィールの体重も80キロに増量。「プロ入りから体重80キロを目指してやってきたので素直にうれしい」と口にしていたが、間近で見るとその胸板は入団時とは比べものにならないほど分厚くなっている。

 その上で技術面での試行錯誤が形になりつつある。「(具体的な)説明はちょっと難しいですね」と言いながら、「インパクトで100パーセントの力を伝えられればいいのかなと思っているので、そこに集中してやっています」。

 そのために何を意識しているのか。平沢は「タイミング」だという。打者は打撃のポイントに「タイミング」を口にすることが多いが、同じ言葉でもそれが意味することは人によって異なる。平沢の場合はどうなのか。

「早くタイミングを取って、そこからゆっくり、というのはあるんですけど。ただ、どんなピッチャーでも一定にしたい。クイックでも二段モーションでも、同じタイミングや同じ間合いで打ちたいと思っています」

 相手が誰であっても、どんなモーションであっても、最後は自分の間合いに引き込む。そんなところだろうか。それが打率は2割台前半にもかかわらず、出塁率は3割5分前後をマークする選球眼にもつながっているのだろう。

「試合には出させてもらっていますけど、『出ている』っていうよりは『出させてもらっている』という感じが強いので。そういう感謝の気持ちをプレーで出せればなと思っています」

 誰よりも早くグラウンドに姿を現し、誰よりもバットを振り込む。平沢がそんな努力の歩みを止めることはないだろう。その先に、自らの力で試合に「出ている」と感じられる瞬間がやってくるはずだ。

文=杉浦多夢 写真=BBM
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