CS進出へもう負けられない巨人は、敗れれば4位後退の可能性もあった9月22日のヤクルト戦(東京ドーム)で、先発のマウンドに立ったエースの菅野智之が強力燕打線を5安打に抑え、今季6度目の完封で13勝目を挙げた。
5対0の9回二死一、二塁の場面では「ここまできたら1点でも取られたら意味がない。完封にこだわって投げました」と、西浦直了に対し渾身の149キロ直球でセンターフライに。シーズン6度のシャットアウトは、1995年の
斎藤雅樹(現一軍投手総合コーチ)以来23年ぶりと、まさにエースの貫禄を見せつける圧倒的な勝利だった。
菅野はこの日の終了時点で25試合に登板し、13勝は
中日・
ガルシアに並んでリーグ2位ではあるものの、防御率2.36、187奪三振はともにリーグトップの好成績だ。残りの日程を考えると、多ければ3試合の先発が予想され、
広島・
大瀬良大地が15勝でトップを行く勝利数のタイトルも射程圏内。もちろん、大瀬良が勝ち星を伸ばさなければの話だが、投手三冠も夢ではない。
さらに、昨季初めて受賞した沢村賞だ。毎年12球団から原則1名が選出される(1966年に
村山実&
堀内恒夫、2003年には
井川慶&
斉藤和巳の2名が同時選出)、先発投手にとっては最も栄誉ある賞だが、今季の菅野も資格は十分と言える。7つの選考基準と現時点での菅野の成績を見比べてみよう(カッコ内が菅野の成績)。
選考基準 【1】登板試合数=25試合以上(25試合)、【2】完投試合数=10試合以上(8試合)、【3】勝利数=15勝以上(13勝)、【4】勝率=6割以上(.619)、【5】投球回数=200イニング以上(183イニング)、【6】奪三振=150個以上(187個)、【7】防御率=2.50以下(2.36)。なお、今年度より、7回で自責点3点以内という独自基準のクオリティー・スタート(QS)率を、補則項目としているが、菅野は25試合で17QSを記録しており、単純に割合を算出すると.680となる。
現時点で7項目中【1、4、6、7】の4項目をクリア(【4】と【7】の率は今後の登板次第で変化)。前述のように全日程終了までに3試合の先発があり、これまで同様のパフォーマンスを発揮できれば、【5】をクリアすることはほぼ確実。【3】が下回っての受賞は88年の広島・
大野豊しかおらず、残り3戦で2勝は高いハードルだが、【2】の完投数とともに期待したい。両リーグ最多の6完封も選考委員会では話題に上るだろう。
近年では16年に広島のジョンソンが4項目での受賞が最少だ。過去にはフルマークでの選出は8人いるが、11年の
楽天・
田中将大(現
ヤンキース)まで遡る。また、複数回受賞者は12人で、
杉下茂(元中日)、
金田正一(元国鉄ほか)、村山実(元
阪神)、斎藤雅樹の3度が最多。菅野はそんな偉大な先輩投手たちに並ぶことができるだろうか。
文=坂本 匠 写真=BBM