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【MLB】コールアップのルールを利用するドジャースの戦略

 

選手拡大枠のセプテンバーコールアップを利用して、ベテランを起用し地区優勝を目指すドジャース。さて勝敗の行方は……


 9月になってドジャースが興味深い戦い方をしている。ご存じのセプテンバー(9月)コールアップで通常の25人の選手枠が40人に広がる。

 本来はマイナーで頑張ってきた若手を上げて、腕試しをさせるためのルールだが、ドジャースはこれを利用し、計算できるベテランを増やし、30球団でも最も層の厚いチームにし、混戦のナ・リーグ西地区を制しようとしている。現地時間9月12日レッズ戦、ベンチ入り36人の選手のうち野手は19人、投手が17人だった。

 その日の野手スタメンは30本台の本塁打を打っているマチャド、マンシー、20本台のピダーソン、グランダル、ベリンジャー、ヘルナンデス、10本台のターナー、プイーグだった。それが6回に左のリリーフ投手が出てくると、元オールスターのフリース、今季16本塁打のテイラーと次々に右の代打が起用された。

 そして8回は右のリリーフ投手が出ると、期待の若手バーデューゴ、通算259本塁打のアトリーと左打者が続いた。まだベンチには16年に42本塁打のドジアー、通算278本塁打のケンプ、好守好打の捕手バーンズ、快足のトーレスらが残っていた。

 レッズのジム・リグルマン監督代行はもともとこのルールには反対だったと言う。「自分がドジャースの立場だったら同じことをすると思う。36人もいて、ほとんどが計算できるベテランだから、投げても打っても常に有利なマッチアップに持ち込める。コマの数が違い過ぎる。明らかに不公平だ」と。

 レッズもコールアップで32人の選手がベンチ入りしたが、従来どおりのコールアップで、メジャー経験の少ない若手ばかり。ドジャースは資金力に加え、抜け目ないフロント陣がルールの盲点を突き、層の厚いチームを作り上げた。そしてまるでアメリカンフットボールやホッケーのようにフィールド上の選手が試合中にどんどん入れ替わる。

 とはいえ、すべて計算どおりに行かない。この陣容で9月同地区の宿敵ダイヤモンドバックスとロッキーズ相手のシリーズは勝ったのだが、今季大幅に負け越しているメッツとレッズのシリーズは取りこぼしてしまった。

 この時点でナ・リーグ西地区では2位だった(現地時間9月22日現在では1位に)このままだとワイルドカード枠でもプレーオフに進めない状況だった。問題は使われる選手たちの気持ちなのかもしれない。ドジャースが集めたベテランたちは、これまで毎日試合の最初から最後まで出るのが当たり前だっただけに、こんな使われ方に慣れておらず、内心では不満を抱える。

 デーブ・ロバーツ監督は「残り試合は少ない。今は連日プレーオフのつもりで戦っているし、そういう采配になる。ウチはほかのどの球団よりも選手層は厚いから、こういう起用が許される。選手もそれは分かっているはず」と言うが、選手たちは例えばスタメンで出た試合で3安打したら、次の試合も続けて出たいはず。

 だがロバーツ監督は「調子の良い人を続けて使うという考え方があるが、1試合1試合、ゲームは違うし、相手投手も代わる。大きなサンプルで考えたほうが間違いない」と言う。調子より、過去の対戦成績などのデータ重視なのである。

 この12日の試合は14人の野手を使い8対1と圧勝。対レッズ戦3連敗は免れていた。仮にドジャースがプレーオフに進出したら、このオフはコールアップのルールは改正が必要だと、議論になりそうだ。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images

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