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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

甲子園に行くために。来年のドラフト1位候補・佐々木朗希に必要なこと

 

大船渡高の157キロ右腕・佐々木。この冬場は、課題と向き合う「勝負の時間」となる


 来年3月のセンバツ大会の貴重な資料となる秋季大会は北海道大会を皮切りに、全国10地区で「春の甲子園」を目指す高校球児による熱戦が繰り広げられる。

 現時点で今秋の高校野球界で、最も注目を集めたのは、大船渡高(岩手)の右腕・佐々木朗希だった。県大会3位決定戦で敗退して東北大会出場を逃したとはいえ、1回戦では自己最速を3キロ更新する157キロを計測した。

 すでにNPBスカウトの間では「2019年のドラフト1位候補」と話題となっている注目の剛腕である。佐々木は3位決定戦後に課題を問われると「すべてです」と答えた。この日、具体的な返答はなかったため、勝手ながら「好投手」から「勝てる投手」への脱皮を遂げるための3カ条を挙げたいと思う。

■その1 ピッチングの強弱


 今秋の段階では「全球全力」の印象が強かった。1回戦から準々決勝まで4日間で3試合、25イニングを一人で投げた代償は大きかった。準々決勝から中3日で迎えた盛岡大付高との準決勝は疲労の色が濃く、7失点で敗退。この試合も166球で完投し、翌日の3位決定戦(対専大北上高)では「先発回避」と、余力が残っていなかった。救援登板も本来のキレではなく、逆転負けを喫している。

 今夏の甲子園で準優勝を遂げた金足農高・吉田輝星は「3段階ギア」の効果により、決勝まで6試合をほぼマウンドを譲らなかった。実はやや力を抜いたストレートのほうが、打者としては打ちづらいとされる。「先発完投」を見据えていく上では、投球術を磨いていくことが必要だ。

 ただし、佐々木の場合は入学以来、長く成長痛に苦しんだ背景があり、大会をフルで登板したのは今秋が初めてだった。センスがあるだけに、今後の練習試合等で「経験」を積んでいけば十分、習得できるのではないかと思う。

■その2 ピッチング周辺の強化


 189センチの大型右腕で、自身の体を使いこなすのは大変である。盛岡大付高との準決勝では、手痛いバント処理ミス(一塁悪送球)があった。執拗なまでに一塁けん制をする場面も見られたが、ピッチング周辺の強化は、結果的に自身の助けにもなる。

 また、捕手も160キロ近い剛球を捕球するのは大変である。バッテリーミスによる失点も目立ったため、より一層「二人三脚」の意識を持ち続け、思いやりを持って接することが大事である。

■その3 2番手投手の育成


 一般選考枠でのセンバツ出場は絶望的となっている大船渡高。実力以外の部分が対象となる21世紀枠での出場の可能性を残しているとはいえ、現状では「夏一本」に照準を合わせるしかない。

 岩手は私学優勢であり、公立校の夏の甲子園出場は1994年の盛岡四高以来、遠ざかっている。以降24年は盛岡大付高(10回)、花巻東(7回)、専大北上高(4回)、一関学院高(2回)、盛岡中央高(1回)という勢力図だ。この輪に公立校・大船渡高が加わっていくには、連戦となる可能性が高い準決勝、決勝までに、佐々木が体力を温存させるか。そこで2番手投手が、いかにエースの負担を軽減するかにかかってくる。

 専大北上高との3位決定戦では先発した右腕・和田吟太が6回5失点と踏ん張った。佐々木とは大船渡一中、オール気仙(KWBボール)を通じてのチームメート。佐々木が成長痛を抱えていた中学3年時は、代わりにエース番号「1」を背負ったこともある実力者である。冬場は右腕・大和田健人を加えた3人で切磋琢磨して、レベルアップすることが望まれる。

 大船渡高は過去2回、甲子園に出場。1984年春は4強進出を果たし「大船渡旋風」を巻き起こし、同夏に連続出場(1回戦敗退)したのが最後だ。佐々木は昨年、一冬をかけた肉体改造(1日6合、5食)により10キロ増で急成長を遂げた。このオフシーズンも、将来の野球人生をかけた「勝負の時間」となる。

文=岡本朋祐 写真=井沢雄一郎
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