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記録の周辺

史上初めて両リーグ規定投球回到達者が1ケタとなる?/記録の周辺

 

戦前は完投数の時代も


パで可能性を残すソフトバンク千賀滉大



 今回、史上初めてセ、パともに規定投球回到達者が1ケタになる可能性がある。
 この理由についての分析はあとにし、ここではまず、「規定投球回の歴史」について書いてみる。

 かなり細かくなるが、結構、面白い。

 個人成績は1936年秋から公式記録となっているが、初年度の規定投球回は40(たぶん後付。当時、規定はなく、あとで設定したと思われる)。トーナメント戦もあったので、試合数に差があり、タイガースの31が最多、名古屋の26が最少となっている。

 その後、しばらく「規定試合数」という基準になり、56試合制の37年春は「10試合以上」。

 この中で200イニング以上が4人。最多投球回は東京セネタース・野口明の257回、最少はイーグルスの古川正男の43回3分の2と210回以上の差がある。

 最優秀防御率0.81の巨人沢村栄治は30試合、244回に投げ、24完投、24勝4敗、防御率0.81だった。

 1939年、1シーズン制初年度は「規定完投数10試合以上」になる。
 96試合制でハードルは高いように思うが、到達者は18人。うち最多は巨人・スタルヒン、東京セネタース・野口二郎(明の弟)の38完投だった。

 これは1年のみ。40年の「30試合以上」、41年が「150投球回以上」、42年「30試合以上」、43年「25試合以上」、44年「11試合以上」となっていく。

 この44年、35試合で打ち切られた戦前最後のシーズンの9人が初の規定到達1ケタだ。
 ちなみに最優秀防御率の若林忠志阪神)は、35試合中、31試合、248回に投げ、24完投、22勝4敗、防御率1.56。応召者が相次ぎ、選手の絶対数が足りなかったシーズンでもあった。

 戦後は規定投球回となり、推移は以下のようになる(試合数がバラバラのシーズンもあり)。

1946年150回以上(105試合制)
1947年180回以上(119試合制)
1948年220回以上(140試合制)
1949年180回以上(最多138試合)
以後2リーグ制
1950年セ180回以上(最多140試合)、パ135回以上(120試合制)
1951年セ135回以上(最多115試合)、パ135回以上(最多110試合)
1952年セ180回以上(120試合制)、パ上位4球団180、下位3球団162回以上(最多121試合)
1953年セ176回以上(最多130試合)、パ180回以上(120試合制)
1954年セ198回以上(130試合制)、パ210回以上(140試合制)

 途中ながら、この54年のセの8人が現在の最少記録だ。その中での最多投球回登板は63試合、395回3分の1に投げ、27完投、32勝12敗、防御率1.39の中日杉下茂だった。

1955年セ190回以上(130試合制)、パ210回以上(最多144試合)
1956年セ190回以上(130試合制)、パ230回以上(154試合制)
1957年セ195回以上(130試合制)、パ198回以上(132試合制)
1958年セ190回以上(130試合制)、パ190回以上(130試合制)
1959年セ182回以上(130試合制)、パ・チーム試合数×1.4以上(最多136試合)
1960年セ182回以上(130試合制)、パ・チーム試合数×1.4以上(最多136試合)
1961年セ182回以上(130試合制)、パ196回以上(140試合制)
1962年セ・チーム試合数×1.4以上(最多134回)、パ・チーム試合数×1.4以上(最多136試合)
1963年セ196回以上(140試合制)、パ210回以上(150試合制)

千賀はきょう9回投げ切ればぴったり到達



 長々と列記していったが、1964年以後は「規定投球回の基準を下げ、投手のモチベーションを上げるため」試合数イコール規定投球回になり、現在に至る。

 この変更により、15人程度だった規定投球回到達者が20〜25人に増えたが、80年代半ば以降になると20人に満たぬ年が増え、徐々に15人前後になっていく。

 さらに2000年代にも少しずつ減っていたが、それでも最低は2008年セの10人と2ケタはキープしていた。

 今季は10月4日現在のセ・リーグ8人、パ・リーグ9人。

 規定投球回以下を見ると、セでは138回の広島岡田明丈がいるが、残り1試合は単独最多勝に挑む大瀬良大地の先発が濃厚。このまま1ケタで終わりそうだ。

 一方パは、ソフトバンクの2人、バンデンハークが138回、千賀滉大が134回にいる。バンデンハークはこれで登板終了となりそうだが、千賀は今夜の先発予定、9回完投でジャストとなるが、いかに。

 ただ、一概に「打高投低」とは言えず、特にセは8人中4人が防御率2点台にいる。1強5弱の中、CS進出のために最終段階まで消化ゲームが作れなかったこともあるが、「試合を任せられる先発」「任せられない先発」に色分けされていたことが推測できる。

 今後この傾向が続けば、規定投球回の基準をまた下げようという意見も出てくるかもしれない。

週刊ベースボール編集部

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