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神奈川県大会で4強進出 打倒私学!公立の星を目指す厚木北のエース・奈良竜王介

 

「弱いチームを強くしたい」


今秋の神奈川県大会4強の原動力となった厚木北高の右腕エース・奈良は「公立の星」を目指す


 神奈川の県立校・厚木北高野球部には「弱者が強者に挑む野球」というモットーがある。私学優勢の勢力図にあって、公立勢が県大会で上位へ勝ち上がるのは厳しい状況だが、厚木北高は今秋、準決勝進出の快進撃を見せた。

 全国屈指の激戦区と言われる神奈川において春、夏、秋を通じて公立校が4強に残ったのは15年春に準優勝した県相模原高以来。現状では8強に残ることさえ厳しいだけに、大きな足跡を残したと言える。だが、10月6日、関東大会出場をかけた桐蔭学園高との準決勝で2対10の7回コールド敗退と厳しい現実を味わった。

 7回10失点で「不甲斐ない投球だった」と、潔く敗戦を受け入れたのはエース兼主将の奈良竜王介(2年)である。とはいえ、136キロ右腕の快投が4強の原動力となったのは明らかだ。4回戦(ベスト16)に進出した今夏の北神奈川大会では20人のベンチ入りメンバーに入れなかった。この秋に急成長を見せた要因は、どこにあったのか。

 2016年4月から厚木北高を率いる加賀谷実監督は川崎北高では河原純一(元巨人ほか)を擁して1990年夏の県大会で4強に進出。その後、相模原総合高、弥栄高で計30年以上の指導キャリアを誇る神奈川公立の名物監督だ。前任校・弥栄でも13年夏には8強に導くなど、各赴任校を強化してきた手腕には定評がある。

 打倒・私学――。加賀谷監督の指導力を慕い、中学校時代に実績のある部員も同校の門をたたいてくる。奈良もその一人だ。「加賀谷先生が練習まで見に来てくれた」。相模原シニアでは主戦投手として関東大会出場実績があり、県外を含めて私学6校から誘いがあった。しかし「弱いチームを強くしたい」と厚木北高の門をたたいた背景がある。

 投手兼任キャプテンは現実的に、負担が大きい。しかし、百戦錬磨の加賀谷監督には、しっかりとした意図があった。

「良い意味で積極的。悪い意味で独りよがり。チーム全体が見られるポジションにしたほうが良いのでは、と。結果的にプラスになった」

 視野の広がった奈良は「周りに声をかけられるようになった」と、加賀谷監督が分析する前者のキャラクターに、自覚が加わった。チームのすべてを背負って投げる責任感は、むしろ心地良かった。桐蔭学園高との準決勝も、決してひるむことはなかった。「私学が相手なので、引いたら勝てない。攻めていきましたが、自分の力のなさを感じた」と、13安打10失点(7四死球)を喫したが、準決勝へ進出しなければ経験できない教訓を手にしている。

 加賀谷監督は「スライダーとチェンジアップには、手応えを得たはず。あとはストレートのコントロールとスピード。もう1ランク、2ランク上を目指さないといけない」と、多くの注文を与えるのも、期待の裏返し。今年11月で58歳となるベテラン監督の下でレベルアップを誓い「神奈川公立の星」を目指す。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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