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強豪復活へ!継承されたスタイルでセンバツを狙う桐蔭学園高

 

2003年春を最後に遠ざかる甲子園


桐蔭学園高は今秋、県大会準優勝。2003年以来のセンバツを目指して、9年ぶりの関東大会(山梨、10月20日開幕)へ出場する


 試合前から見ごたえ十分である。ベンチ入り25人、足並みがそろった外野でのランニングは「神奈川No.1」と言っていい。思い起こせば、桐蔭学園高の開会式の入場行進は手足を大きく上げて、一糸乱れぬ動きを見せる。試合中の円陣も、背筋をピンと伸ばし、指示を出す片桐健一監督の目を見て真剣に聞く。チーム全体として統率が取れた「TOINスタイル」は、しっかりと継承されていた。

 今秋、桐蔭学園高は県大会で決勝進出を遂げ、神奈川で出場2枠の関東大会を9年ぶりに決めた。決勝では横浜高に2対11で大敗したものの、強豪復活への足跡をしっかりと記した。

 同校は1971年夏の甲子園で初出場初優勝。その後は当時の優勝捕手である土屋恵三郎監督(現星槎国際湘南高監督)が母校を率い、春夏計10度の甲子園へ導き、全国屈指の激戦区・神奈川で存在感を示してきた。

 しかし、2003年春を最後に、甲子園から遠ざかっている。土屋監督の2度目の勇退となった13年秋以降は、桐蔭学園中(軟式)で実績十分の大川和正前監督が率いたものの、厳しい戦いが続いた。15年夏の県大会は3回戦で戸塚高、17年夏は県大会3回戦で大師高、同秋も県大会3回戦で弥栄高と、いずれも公立勢に敗退している。

 大川前監督の後任として、17年秋の県大会後に片桐氏が復帰。同氏は1991年夏、三塁手として甲子園出場。チームメートには同期の主将・高木大成(元西武)、1学年下は副島孔太(元ヤクルトほか)、2学年下には高橋由伸巨人監督)がいた。日体大を経て同校コーチに就任し、土屋氏が1度目の勇退(総監督就任)となった07年秋以降から09年春まで監督を務めた。土屋氏が復帰して以降は、部長としてチームを支え、そして昨秋、低迷する母校再建を託されたのである。

 しかし、負の連鎖はなかなか断ち切れない。今春の県大会では初戦(2回戦)で川崎北高に敗退(4対5)と、またも屈辱を味わっている。ノーシードで挑んだ今夏の北神奈川大会は8強進出と久々に上位へ顔を出すと、この秋、名門復権へのきかっけをつかんだのだ。

コツコツと図った心技体の充実


 旧チームからの2年生レギュラーは現主将の森敬斗と、上川航平の2人のみ。主将・森は言う。

「個の力では3年生の代のほうが上。チーム力で勝負していこうと、練習から1プレー、1プレー、1球、1球に対してコメントしながら取り組んできた。スキを見せたら次につながらない」

 足元をしっかりと見つめて、コツコツと心技体の充実を図ってきたという。

 片桐監督が「ウチのグラウンドでやっていることが、実戦でできるように」と言うように、試合のための練習を反復してきた。日ごろの成果を発揮した上で「一戦必勝」で挑む。攻撃陣は機動力を駆使し、追い込まれてからも、ボールに食らいつく粘り強さを徹底。また、投手陣も「突出した選手はいないが、6人でアウト一つずつ積み重ねていく」(片桐監督)と、左腕・伊礼海斗を軸に、左右でタイプの異なるタイプが持ち味を最大限に発揮してきた。今秋の県大会は2回戦から5試合を勝ち上がり、来春のセンバツにつながる関東大会(10月20日開幕、山梨)への出場を射止めた。主将・森はプライドをかけた思いを口にする。

「1球に対する強い気持ち、執着心を持って練習してきた。1000人以上のOBがおり、伝統を築いていかないといけない。負け続けるのはOBの方々にも申し訳ない。(今回の関東大会出場により)自分たちの代で、新しい伝統を刻めて良かった。TOINのユニフォームを着ている以上は、勝っていかないといけないという強い気持ちを持っている」

 もちろん、今秋の戦いは途中段階だ。関東大会を勝ち進み、16年ぶりのセンバツ切符を手にしてこそ、真の「強豪復活」と言える。

 桐蔭学園高の選手たちは三振を喫した後、すぐに打席を離れず、自らが荒らした足下の土をならしてから、ダッシュでベンチへと戻る。常日頃からの指導が行き届いている1シーンだ。細かい心配りが、試合の結果に即、結びつくかは分からない。しかし、だれもが存在を信じて疑わない「野球の神様」が、地道な取り組みをどこかで見ているのは間違いない。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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