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【ドラフト会議物語26】最注目の志村亮はプロ拒否、ドラゴンズの大成功ドラフト【1988年】

 

今年は10月25日に行われるドラフト会議。毎年、金の卵たちが、どの球団へ進むか大きな注目を集める“一大イベント”で、さまざまなドラマも生まれる。今年で54年目を迎えるドラフト会議の歴史を週刊ベースボールONLINEでは振り返っていく。

西武は相変わらずの“ドラフト上手”


王貞治にあこがれ台湾から来日した大豊泰昭の入団会見


1988年11月24日
第24回ドラフト会議(ホテル・グランドパレス)

[1位選手]
阪神   中込伸  (神崎工高)
ロッテ  前田幸長 (福岡第一高)
ヤクルト 川崎憲次郎(津久見高)
ダイエー 篠田淳  (大垣商高)
大洋   谷繁元信 (江の川高)
オリックス酒井勉  (日立製作所)
広島   野村謙二郎(駒大)
日本ハム 中島輝士 (プリンスホテル)
巨人   吉田修司 (北海道拓殖銀行)
近鉄   米崎薫臣 (日本生命)
中日   今中慎二 (大阪桐蔭高)
西武   渡辺智男 (NTT四国)

 最大の注目は慶大の左腕・志村亮だったが、「絶対にプロ入りしない」と明言。各球団は“志村抜き”で戦略を切り替えたが、結果的に1位の“成功率”はかなり高い。

 球団別で「1位クラスを3人取った」と言われたのが、中日。1位がミスター完投、左腕の今中慎二、2位には名商大を経て球団職員となっていた台湾出身のホームランバッター・大豊泰昭、3位には大学進学を表明していた巧打の外野手・山口幸司。山口は故障があって大成しなかったが、珍しい「サヨナラ本塁打の代走」でも名前が残る。中日は5位で堅守の内野手・酒井忠晴(修徳高)、6位で俊足外野手・清水雅治(三菱自動車川崎)を獲得と大成功ドラフトだった。

 阪神も“球団職員戦略”を駆使した。1位の中込伸は甲府商高の定時制だったが、尼崎市の神崎工高に転校させ、球団職員扱いとして1年後となったこのドラフトで指名した。

 のち野村ヤクルトでエース格となる川崎憲次郎は巨人と競合し、ヤクルトへ。ちなみに2位の岡幸俊(高知商高)もロッテ、ヤクルト、ダイエー、広島、巨人の5球団が競合したが、ここでもヤクルトが引き当て、クジ運の強さを見せている。外れた巨人が指名した吉田修司はダイエーに移籍後、鉄腕リリーバーとして開花している。

 西武はプロ拒否と思われた渡辺智男を1位、会社残留を表明していたプリンスホテルの石井丈裕を2位指名と、相変わらずの“ドラフト上手”。さらに3位でも一、二軍で100本塁打以上を放った垣内哲也(日高高中津分校)を獲得している。

 さらに大洋がのちの正捕手・谷繁元信、広島が俊足強打の遊撃手・野村謙二郎とのち一軍監督を1位で獲得(谷繁は中日)し、ロッテの前田幸長らもしっかり活躍。1位で結果を残せなかったのは、故障に泣いたダイエーの篠田淳だけだった。

 ほか2位でオリックスに小川博文(プリンスホテル)、近鉄に中根仁(法大)の名前もあるが、興味深いのが4位以下のタイトルホルダーだ。ロッテ4位が打点王の初芝清(東芝府中)、6位が首位打者の平井光親(愛知工大)、近鉄4位が最優秀防御率、さらに最優秀救援投手5回の赤堀元之(静岡高)、広島5位が本塁打、打点王の江藤智(関東高)とそうそうたる顔ぶれになっている。

 ちなみに1位で現役時代に中日のユニフォームを着たのは、今中に加え、川崎、前田、谷繁と多く、その点でも「ドラゴンズのためのドラフト」と言ってもいいかもしれない。 

<次回に続く>

写真=BBM
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