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ドラフトの日に行われる「戦国東都」注目の優勝決定戦

 

ドラマを生んだ「日程変更」


東洋大は亜大2回戦で敗戦、リーグ4連覇を逃し、試合後は悔し涙を見せた(写真)。一方の亜大はこの1勝により、最下位と一部二部入れ替え戦を回避。両校の明暗はくっきりと分かれた


 東都大学一部リーグは6校の実力が上位から下位まで拮抗していることから、長年にわたり「戦国東都」と言われている。10月23日のリーグ戦最終日は、その“呼称”にふさわしい激戦が神宮球場で繰り広げられた。

 本来、最終週(第8週)の単独カードだった東洋大対国学院大は第7週に移り、最終週は第3週の未消化分2試合(亜大−東洋大2回戦、駒大−国学院大3回戦)が組み込まれた。なぜ、こうした「日程変更」が起こったのかと言えば、今秋に始まった話ではないが、神宮球場の使用日が大きく影響している。

 日程発表の段階では、東都大学リーグは火曜日から1回戦が組まれるが、水曜日までは東京六大学(土曜日から1回戦)の予備日となっているため、順延は日常茶飯事。つまり、神宮球場の東都の優先権は木曜から。天候不順などにより、金曜日までに消化できない場合は「積み残し」となり、翌週以降の開催となる。例えば、当該校が火、水曜日の2回戦で決着をつけた場合は、中1日の休養日を経て、金曜日に未消化分を行う。しかしながら、なかなかこの条件は整わず、結果的に第3週の未消化分2試合は最終週に回った。

 この「日程変更」が結果的に、ドラマを生むことになる。

 東洋大対亜大。お互い勝利を目指すことには変わりないが、その目的は明らかに違った。リーグ4連覇をかけた東洋大の一方で、亜大最下位を回避するという、あまりに好対照。亜大先勝で迎えた2回戦。この時点で東洋大は7勝5敗、勝ち点3。すでに7勝5敗、勝ち点3で全日程を終えている立正大を上回るには、この日の2回戦、そして翌3回戦を連勝して、勝ち点を4に伸ばすしか道はなかった。一方、亜大は6勝6敗の勝ち点1。最下位の対象チームである中大は4勝8敗、勝ち点2で全日程を終了しており、亜大が二部優勝校との入れ替え戦を免れるには、2回戦か3回戦で白星を挙げ、勝ち点2を奪取する必要があった(同じ勝ち点2でも、7勝6敗の亜大が、勝率で中大を上回る)。

 お互い相譲らず1対1のまま延長に突入し、最後は12回表、リーグ戦初出場の有田球児(3年・高知高)の適時打で勝ち越した亜大が連勝で勝ち点2を挙げている。整列後の表情は最下位を脱した安堵感と、優勝を逃した絶望感。明暗がくっきりと分かれた。亜大・生田勉監督は「優勝と6位のプレッシャー……。しびれました。これが、東都の醍醐味。それがあるから、成長させてくれる。社会に出たときにも生きる」と笑顔を見せれば、東洋大・杉本泰彦監督はこう語っている。

「4連覇の思いと、最下位(の回避をかけた)のぶつかり合いだったので、ぜひとも勝ちたかったが、その思いが届かなかった。負けたのは監督の責任だと思います」

7勝5敗、勝ち点3で並んだ駒大と立正大


 東洋大がV戦線から脱落し、優勝争いは立正大と駒大に絞られた。この日の第2試合は、駒大対国学院大。6勝5敗、勝ち点2である駒大のVの可能性は、1勝1分で迎えたこの3回戦で勝ち、立正大との優勝決定戦へ持ち込むだけだった。6回まではゼロ行進も、駒大に7回に挙げた4点を守り切った。駒大と立正大は7勝5敗、勝ち点3で並んだ。

 駒大・大倉孝一監督は「こんなことがあるんですね……。ウチだけの力ではないものが働いている」と、史上空前の優勝争いに困惑した表情を見せた。実際、この国学院大2回戦を落とせばV逸で立正大の優勝が決まる展開だったが、駒大に気負いはなかった。

「落とせない試合を落とさないで済むなら、それほど楽なことはない。ウチは開幕から1球1球の粘り、1球1球を大事にしてきた。それをずっと言い続けてきた結果、今日の最終週まできたんです」と、練習から地道に積み上げてきた成果を強調。中1日を空けた10月25日、12時から優勝決定戦が行われるが、17日以来の試合となる立正大と比べて、駒大は疲労度では分が悪い。しかし、大倉監督は「リーグ戦が続いているつもりで、ウチはやるしかない」と、試合勘を鈍らせることなく臨めるメリットを言及していた。

 今秋の「戦国東都」は、泣いても笑っても残り1試合。10月25日はドラフト会議の話題で一色となりそうだが、それを一掃するだけの一発勝負も見応え十分。一球一打が試合の流れを左右する、野球の醍醐味が見られる。

文=岡本朋祐 写真=長尾亜紀
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