今年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。 阪急日本一の応援団
今回は『1964年8月24日号』。定価は50円だ。
巨人・
王貞治のホームランラッシュが止まらない。
8月9日の大洋戦、ダブルヘッダー2試合で3本塁打。これで44号となった。残り31試合。52本の日本記録更新も一気に見えてきた。
一方、この連敗で大洋は首位陥落。
阪神がトップに立った。阪神の追い込みのキーマンは
山内一弘に代わって四番に入った
遠井吾郎。「座り心地はいいな」と本人も乗っている。
遠井は、暑い夏場にもかかわらず体重増。理由を聞くと、
「たぶんビールだね」
と答えた。ビールを飲んでたらふく肉を食って寝る。これが遠井の夏バテ防止法らしい。
そういえば、先日、
広岡達朗氏の取材をした際、「長嶋のホームスチールに怒って、試合の途中で帰った」と言っていた。はっきりとした日付はおっしゃっていなかったが、この号では長嶋がホームスチールで批判を浴びている、という記事があった。
場面は8月4日、6日の国鉄戦。打席はいずれも広岡だった。
4日は二死三塁から。
川上哲治監督から1球目で「いけるところでいけ」とサインが出たが、2ストライクから走り、長嶋が滑り込む前に広岡が見逃し三振となった。
6日はサインはなかった。長嶋の言葉を紹介する。
「あのときは2対0で負けていたんですよ。何とか1点をほしかった。そうしたら不思議とホームが近く見えて、邪魔者が何もないような気がしたんですよ」
だが、結果はまたも失敗。2つとも広岡には知らされておらず、あとで随分、怒られたようだ。
パでも首位交代。阪急を抜いてトップに立った南海では、アンダースローの
杉浦忠が8月9日、13連勝を飾り、その原動力になっていた。
本人は「不思議なんや。当然黒星がつくゲームも誰かが助けてくれる」と話していた。
捕手の
野村克也は、
「スピード、キレは昔と比べりゃ雲泥の差さ。だがな、往年のスギより野球への執着心がある。蚊の止まるようなスローボールを投げても、その1球に全力を入れて投げよる。血のかよったボールは、そこいらのヘナチョコバッターには打てん」
ただ、抜かれた阪急も盛り上がっている。西宮の試合には阪急グループから1万人近くを動員。なかには百貨店、電鉄だけでなく、宝塚ガール100人、3年連続日本一の阪急吹奏楽団も集まり、かなり賑やかだった。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM