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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

日の丸を背負い地球の裏側で世界を相手に奮闘する安田尚憲

 

ロッテの高卒1年目ルーキー・安田は侍ジャパンU-23代表で、稲葉監督から熱血指導を受けていた


 時差は14時間。地球の裏側に位置するコロンビアで、若きサムライたちが「世界一」を目標に戦っている。

 侍ジャパンU-23代表は、第2回WBSC U-23ワールドカップ(コロンビア・バランキージャ)に出場している。オープニングラウンドを5連勝でグループAを1位突破すると、グループBの上位3チームと対戦するスーパーラウンドでも韓国、ベネズエラに連勝。ドミニカ共和国との第3戦を残し、スーパーラウンド1位通過と、優勝した2016年の第1回(メキシコ)に続く決勝進出を決めた。チームの指揮を執るのは、トップチームを率いる稲葉篤紀監督だ。昨年7月の就任以来、初めての海外での大会で指揮官としても貴重な経験を積んでいる。

 今回はプロ19人、社会人5人というチーム編成であり、稲葉監督は「若い選手と一緒に成長していきたい」と、国内直前合宿の段階から積極的コミュニケーションを取ってきた。特に目をかけてきたのが、ロッテの高卒ルーキー・安田尚憲である。現役時代、同じ左打者だった稲葉監督は「彼の成長というのが、これからのプロ野球にも大きな影響が出ると思います」と大きな期待をかけていた。

 安田はチーム最年少の19歳ということもあり、練習から積極的に声を出して、チームを盛り上げていた。そんな実直で、真摯な姿勢を見た稲葉監督は「彼はいじれるな、と。性格も非常にいいですし、明るくて元気。いいターゲットを見つけた」と語ったのである。誤解をしてはならないのは「いじれる」とは、ふざけるような意味とはかけ離れており、最大の褒め言葉。何とか活躍してほしい、と手を差し伸べたくなるキャラクターなのだ。

 そこには、2人だけの世界が広がっていた。国内直前合宿の最終日(10月15日)。全体練習を終えると、稲葉監督は安田を誘い出した。Lケージを立てて、正面からトスするロングティーを約30分。身振り手振りで熱血指導し、そのアドバイスに応える安田。その光景は、これまでもずっと二人三脚で歩んできた「師弟関係」のようだった。

「体で覚えろ!!」

「疲れてからが大事。力が入っているぞ!!」

「キャンプだったら、倒れるほどやらせたかったのに!!」

 安田は「すごくありがたいこと。いろいろ吸収していきたい」と前向きに語っていたとおり、大会本番ではその成果を早速、出した。チャイニーズ・タイペイとのオープンングラウンドでは右中間に豪快な本塁打。開幕から6試合連続安打を放ち、決勝進出を決めたベネズエラとのスーパーラウンドでは初の無安打も、勝ち越しのきっかけを作る犠打を決め、チームに大きく貢献している。ベネズエラ戦を終えた段階で打率.428(21打数9安打、1本塁打、7打点)と好調をキープしている。

 稲葉監督は「この期間を通じて、何かをつかんでほしい」と語っていた。安田は今季、一軍でも初本塁打を放ったが、60打席に立ったところでシーズンを終えている。新人王資格を残したいという、首脳陣の配慮があったのだ。コロンビアでの武者修行を経て、2年目の来季は大きく飛躍しそうな予感が漂っている。大会2連覇をかけた決勝は、日本時間10月29日の9時にプレーボール。地球の裏側で「世界一」を目指している19歳・安田のバットから目が離せない。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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