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週刊ベースボール60周年記念企画

野村克也、寿司の食べ比べで王に快勝?/週べ1964年9月14日号

 

 今年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。

ルースの打撃論


表紙は巨人王貞治


 今回は『1964年9月14日号』。定価は50円だ。
 8月27日の大洋戦(後楽園)で巨人・王貞治が2本塁打。ついに51本塁打。南海・野村克也の52本に1本差に迫った。

 残り18試合。このペースでいけば、世界記録ロジャー・マリスの62本を抜く可能性もある。

 野村は「王の場合、セの広い球場で打ったのだから堂々たる記録だ。そういっちゃなんだが、東京や日生を王が使ったら60本になっているんだろうな」。
 当時はあまりボヤかなかったようだ。
 実際、パの狭い球場(野村は言わないが、大阪も含め)で、この年のパ同様150試合だったら、すさまじい記録を作ったかもしれないが、それを言ったらきりがない。

 なお、王と野村が寿司屋で食べ比べをしたという話があった。王はかなり自信があったようだが、野村の50個には及ばなかったらしい。
「上には上がある」
 とさすがの王も舌を巻いていた。

 ベーブ・ルースと親しかった鈴木惣太郎が、ルースがバッティングについて語った言葉を紹介していた。
「フォロースルーなど云々するが、それは枝葉末節で、投球に対して鋭くカットできるかどうかだけ心がけてきた」
“ミート”はボールを線でとらえ、“カット”はボールを点でとらえることという。
 現在のフライ革命でも「打球はボールがバットに当たるまでしか関係ない」としているが、似たような考え方なのだろうか。

 国鉄・金田正一の「一番確実に防げるのは、王にフライを打たせんことだよ。ゴロじゃホームランにならんのだからね」も、それっぽい。

 彼らが先んじていたという見方もできるが、むしろ理論は常に後からきているだけ、ともいえるようにも思う。

 パで旋風を起こし、首位を走っていた阪急だが、陥落後、南海にジリジリ離され、すでに6.5ゲーム差。西本幸雄監督も
「笛吹けど踊らずというが、ワシの笛もとうとう鳴らなくなったわい」
 と事実上のギブアップ宣言をしていた。

 南海は打ってはホームランダービートップの野村、8月28日時点で打率.374の広瀬叔功、投げては、すでに21勝を挙げていたスタンカがけん引していた。
 スタンカのインタビュー記事もあったが、日本式の投手の酷使に疑問を呈し、「こちらのピッチャーのように使われたのでは、自分はいい結果を出すことができない」と球団にも言っていたらしい。
 さらに、
「アメリカでは20勝を10年くらい続けたいという生き方が多いんですが、日本の投手は一編30勝して、かりに3年や4年でダメになっても構わないという考えの人が多いんじゃないですか」
 とも話していた。稲尾和久(西鉄)、同僚の杉浦忠を見てだったのか。

 では、またあした。

<次回に続く>

写真=BBM

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