週刊ベースボールONLINE

ベースボールゼミナール

プロに入るとアマ時代の球速が出なくなるのはなぜ?/元阪神・藪恵壹に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は投手編。回答者はメジャー・リーグも経験した、元阪神ほかの藪恵壹氏だ。

Q.高校時代にMAX150キロや140キロ台後半を投げていたピッチャーが、プロ入り後に一軍に上がってくると、やっと140キロ台に届くか届かないかの球速まで下がっているケースがあります。逆に、ソフトバンクの千賀滉大選手のように、無名の選手がプロで数年を経て20キロ近く球速を上げ、150キロを超える剛腕となってデビューすることも目にします。このような差が出てしまう理由はどんなところにあるのでしょうか。(神奈川県・58歳)



A.アマチュアではありえない長丁場で、疲労が影響します。「投げたら休む」がパフォーマンスを長く保つ方法です。


イラスト=横山英史


 これは個人によって差があると思いますし、一概に全員が全員、どちらかに当てはまるわけではありません。ただ、期待されたアマチュアのホープが、いざ一軍のマウンドに上がったら、「あれっ?」とファンの方が思うこともあるのも確かです。その理由の1つとして、活動期間の長さが挙げられると思います。

 例えば大学生であれば、公式戦は春と秋の2シーズンに限られ、短い期間に集中して(といっても週2試合〜+1試合程度)順位を決めます。ここで優勝すれば、その後に全国大会(とそれに向かう予選)があるわけですが、真剣勝負はこの程度ですよね。高校野球ならば公式戦は秋、春、夏のトーナメントのみ。一方で、プロ野球はオープン戦やポストシーズンを除いても今ならば143試合あるわけで(ファームでもそれなりに公式戦の試合数はあります)、年中試合があるわけです。

 試合数が多いとどうなるか。登板が過多となり、疲労がパフォーマンスに影響を与えることは無視できません。とはいえ、今の時代はMLBから情報を逐一手に入れられるようになり、体のケアや球数のケアに慎重になる球団が増えてきました。なぜメジャーの選手はあのすごいボールを10年キープできるのか。野球をやっている者なら、誰だって興味のあるテーマですから、良いものは積極的に取り入れていくわけです。

 それでもスタッツなどを見ると、良い成績・パフォーマンスを維持できるのはメジャーの10年に対し、日本では5〜6年、もしくは隔年で長く活躍する選手が多いようです。

 千賀滉大選手などの場合は、フォームなどの技術的な改善に加え、筋肉などの成長とトレーニングのバランスがうまくマッチしたのだと考えられます。29歳くらいまでは体力的な向上が望めますからね。ただ、問題はそのパフォーマンスが長く継続できるか、にあります。千賀選手を例に挙げますが、シーズンを投げ抜いて、その上でオフやプレシーズンに代表活動などもあるのはどうでしょうか。投げたら休め。リカバリーがあってこそ、継続できるのです。

 また、日本の悪い部分で、毎日100パーセントが求められることもそう。特にファームなどで顕著で、100を出すのは試合のときだけでいいのです。考えをあらためないといけませんね。

●藪恵壹(やぶ・けいいち)
1968年9月28日生まれ。三重県出身。和歌山・新宮高から東京経済大、朝日生命を経て94年ドラフト1位で阪神入団。05年にアスレチックス、08年にジャイアンツでプレー。10年途中に楽天に入団し、同年限りで現役引退。NPB通算成績は279試合、84勝、106敗、0S、2H、1035奪三振、防御率3.58。

写真=BBM
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング