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2019年ドラフト戦線でトップに駆け上がる星稜高・奥川恭伸

 

広陵高戦で7回無失点の快投


星稜高・奥川は神宮大会1回戦(対広陵高)でフォークを解禁し、相手打線を散発3安打11奪三振に抑え、7回コールド勝ちしている


 2018年ドラフトは「高校生野手」が主役だった。大阪桐蔭高・根尾昂内野手(中日1位)、報徳学園高・小園海斗広島1位)に各4球団、大阪桐蔭高・藤原恭大ロッテ1位)に3球団が第1回入札で重複している。つまり、12球団中11球団が集中したのである(西武は日体大・松本航投手を唯一の単独指名)。

 スカウト戦線は毎年、投手を中心に動いていく傾向にあり、18年はレアケースと言える。ただ、19年は“通常”の展開へ戻りそうだ。しかも、すでにこの秋の段階で、高校生6投手が話題になっている。さかのぼれば、今年6月から脚光を浴びる存在となっていた。

▼大船渡高・佐々木朗希(最速157キロ)

▼横浜高・及川雅貴(最速152キロ)

▼日大三高・井上広輝(最速150キロ)

▼菰野高・岡林勇希(最速148キロ)

▼星稜高・奥川恭伸(最速150キロ)

▼創志学園高・西純矢(最速150キロ)

 昨年6月20日、侍ジャパン高校日本代表の第一次候補30人に入った2年生投手だ(及川のみ左腕)。この6人のうち、11月9日に開幕した明治野球大会に唯一、名乗りを上げたのは星稜高・奥川である。奥川は9月に宮崎で開催されたU-18アジア選手権の代表にも2年生でただ一人入り、銅メダルを獲得。今春、夏の甲子園にも出場しており、経験、実績において同世代でNo.1の逸材である。

 11月10日、広陵高との2回戦。先発した奥川は中国大会優勝の打線を散発3安打、11奪三振で無失点に抑えた。9対0の7回コールドで完勝して、北信越王者の貫録を見せつけている。

 広陵高の名将・中井哲之監督はプロ注目投手の快投に、試合後は脱帽するしかなかった。

「今、このチームで、あんなピッチャーを見たこともないですし、そういう練習もしていない。弱いほうが負けです」

 実は密かな期待を抱いていた。中国大会準決勝では西を擁する創志学園高に8回コールド勝ち(7対0)。

「彼を打つために練習してきた。ボール球に手を出さず、うまく見極めることができた」

 その勢いで決勝では米子東高に快勝し、明治神宮大会出場を決めた。

現時点では創志学園高・西より上


 しかし、奥川の攻略は難しかった。広陵高打線が最も苦しめられたのは、フォークである。中井監督は言う。

「131〜3キロ。(視界から)消えるというか……。一昔は130キロも出れば『良いピッチャー』と言われていたわけですから、150キロ近いストレートがあった上で、落ちるわけですから……。簡単にストライク先行で来られると、展開としては厳しかった」

 そして、西との比較についてこう言及する。

「コントロール、緩急。今の時点では(奥川のほう)上。ただ、実体験できたのは良かった。反省して、この負けがあったからこのセンバツがあったんだよ、と言える冬を過ごしたいと思います」(中井監督)

 奥川は7イニングで、わずか78球の省エネ投球で、しかも無四球。相手打線を、上から見下ろすかのような落ち着きがあった。県大会、北信越大会を通じて使ってこなかったフォークを、この日に解禁したという。

「いつも、スライダーばかりになる。全国大会で自分の力を試そう、と。昨日の練習で手応えが良かったので、使っていこう、と。低めに落ちてくれていたので良かった。フォークはボール球で良い。空振りを取りたいときは、ベース板の角に落とすイメージです」

 奥川は多くのステージを踏み、ドラフト戦線でもトップに駆け上がりそうな勢い。目標は「全国制覇」。まずはこの秋、全国10地区の優勝校が集結する神宮大会で頂点を狙う。

文=岡本朋祐 写真=井田新輔
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