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平成最後の神宮頂点を狙う近大のキーマンは“糸井嘉男二世”

 

国際大会での苦い経験を糧に


近大の四番・佐藤は神宮大会1回戦(対筑波大)で先制ソロ本塁打。左打席から逆方向への一発に、高い将来性を感じた


 打つたびに「糸井二世」と言われる。そう表現しなければ、近大・佐藤輝明(2年・仁川学院高)のすごさを説明できない。左打席からの鋭い弾道には、惚れぼれとしてしまう。

 筑波大との明治神宮大会1回戦(11月10日)。双方無得点で迎えた4回表、先頭の四番・佐藤がたたいた打球はあっという間に、左中間スタンドへ吸い込まれる。逆方向への先制の一発は、豪快かつ技ありの放物線を描いた。

「良い感じで、こすり上げた。(ボールに)回転をかけて……。風に乗って入ったと思います。フォークが良かったので、低めは捨てて入りました。追い込まれてからは、フォークを意識しましたが、(相手投手は)裏をかいたのか、真っすぐがきた。自分のスイングができれば、(タイミングを)ずらされても打てる自信はあります」

 大学の先輩・糸井嘉男阪神)と比較されることは「ありがたいこと。攻守走、すべてで活躍したいので、あこがれの存在」と語る。

 無類のメジャー・リーグ好きであり、ブライス・ハーパーにあこがれている。9日から日米野球が始まったが、試合前日の第1戦を当然、チェック。メジャー・リーガーのすごさに目を奪われつつも、ソフトバンク柳田悠岐のサヨナラ本塁打には「目標としているので、すごいと思います」と目を丸くさせた。すでに、3人の名前が挙がっているが、つまり、左の強打者を目指しているのである。

 苦い経験が糧となっている。今夏は侍ジャパン大学代表として、日米大学選手権(米国)とハーレームベースボールウイーク(オランダ)に出場。約1カ月に及ぶ海外遠征だったが、2大会で13打数1安打と、力を発揮することができなかった。外国人投手特有の手元で動くボールに惑わされ、さらに結果を求めるあまり、フォームを崩されたという。日本帰国後は体重移動を意識した形をもう一度、体に染み込ませた。今秋のリーグ戦では打率.354、3本塁打、9打点でMVPを受賞している。

 1年生ながら「DH・五番」で出場した昨年6月の大学選手権1回戦(対岡山商大)では3打数無安打。8月の高校日本代表との壮行試合でも先発したが、2打数2三振で途中交代の悔しさを味わった。それだけにこの日、筑波大との1回戦での「神宮初安打」が、初戦突破(2対1)に貢献する一打となり「すごく、うれしいです」と笑顔を見せた。

 チームの合言葉は「平成最初の日本一は近大 平成最後の日本一も近大」で統一されている。近大は1989(平成元)年に明治神宮大会で初優勝。平成最後となる今秋も日本一で締めようとチーム全員で誓い合ってきた。寮に設置されているホワイトボードにも書かれている。「明治維新150周年記念」でもある今秋の明治神宮野球大会。近大は1997年以来、3度目の頂点を虎視眈々と狙う。打線のキーマンは言うまでもなく「糸井二世」である。

文=岡本朋祐 写真=川口洋邦
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