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編集部コラム「Every Day BASEBALL」

西勇輝の阪神加入で投手陣にいい相乗効果を期待したい

 

プロ1年目から自分を知り、自分を生かす術をしっていた西。阪神への移籍でチーム内にもいい効果を期待したい



 10年前、オリックス二軍春季キャンプで、ある高卒投手が笑顔で同期の年上投手に声を掛けた。「キャッチボールしましょうよ!」。厳しい練習メニューの中の束の間の休息時間だった。休憩せずにとにかく「投げたい」という気持ちにあふれていた。
 
 その高卒1年目の夏にインタビューを取ったときには「毎日投げたいので、将来は抑えになりたいです。勝ち試合に出て、毎回歓声を浴びるんですよ。楽しいじゃないですか」と答えている。歓声を浴びたいという気持ちは、今回の移籍のときに矢野燿大阪神監督の「ファンを喜ばせたい」という言葉に共感したのに通じるものがある。

 12月7日、西勇輝がFAでの阪神移籍を決めた。阪神での役割は「イニングイーター」らしく1年間先発ローテを守り、試合を作る投球をすること。それと同時に彼の投手としての取り組みが、若い投手たちの手本になることだ。

 高卒1年目から、考え方もクレバーだった。「僕は、真っすぐが速くないので、いかに速く見せるかを考えて投げています」。高卒ならまだまだ速さを追求したがる部分もあるはずだが、西の頭の中には「いかにして打者を抑えるか」しかなかった。また、投球だけでなくフィールディングやけん制なども、常に研究している。1年目に二軍の試合で1試合2個のボークを取られたことがあったが、そこからセットポジションのグラブの位置を変えるなど先輩投手に意見を求め、試行錯誤し審判にまでボークを取られるかどうか、聞きにいったこともあった。

 その後もオリックスの先輩投手に、いろいろなことをしつこいくらい聞きまくり、それを吸収し通算5度の2ケタ勝利を挙げる投手にまでなった。阪神に移籍してもいろいろな投手の話を聞き、実践し自分のモノにしていくはず。一方で、その経験なども聞かれたらしっかりと伝える言葉を持った投手だ。

 その西の持っている能力を少しでも若手先発候補陣、特に右投手たちが自分のモノにできるようなら、阪神はさらなる投手王国になるはずだ。西の加入で投手陣にいいケミストリーが起こることに期待したい。

文=椎屋博幸 写真=BBM
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