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球界屈指の変化球マスター・金子弌大がつむいだ金言

 

2014年に小社から発行された『変化球バイブル』で投げ方をレクチャーする金子


 自分の言葉を持った選手。それが先日、日本ハムに電撃加入した金子弌大(千尋から登録名変更)だ。これも何かの縁なのか、オリックス在籍時代の2014年に小社から発行した『金子千尋の変化球バイブル』の制作に私も編集担当の1人として関わった。

 球界屈指の変化球マスターである金子が全8種類、10種類に及ぶ自身が磨いてきた変化球の投げ方、習得方法を惜し気もなく披露。2009年に同様のシリーズで発行した『ダルビッシュ有の変化球バイブル』に続いて、多方面で大きな反響を呼んだ(のちに書籍化)。その本をいま読み返してみると、あらためて「自分の言葉、自分の表現方法を持った選手」だなと感じさせられる。その中でも特に印象に残ったのが以下の言葉だ。

 変化球を覚えたい人にワンポイントアドバイスをするなら? という問いに対して返ってきた言葉が「変化することが良い変化球とは限らない。変化しないことを怖がらないでいい」。

 読者のほとんどの方はなかなかボールが変化してくれないからこそ、この本を手にとっていただいたと思うが、それを真っ向から覆した金子。その真意はこうだ。

「自分で見て変化しているということは、変化する場所も早いですし、そういうボールって案外『打ちづらくない』のかなと思います。1つの例で僕のチェンジアップをブルペンで見た方は『なんだこのボール!?』って思うはずです。ただストレートが遅いだけなので。でも、そんなボールでもバッターは空振りしてくれますし、凡打になることもある。必ずしも変化が大きいからってバッターが打ちづらいとは限らない。バッターに『おかしいな、何で打てないのかな』と思われるようなピッチャーを僕は目指していきたい」

 体も決して恵まれたほうではない右腕が日々の努力、経験値を積み重ねて辿りついた奥深き変化球論。その深淵に触れれば触れるほど、金子というピッチャーに興味が沸いてくる。

 日本ハムに入ってもその卓越した技術と理論は、若手投手が多いチームに新たな風と科学反応を起こしてくれるはずであり、球界屈指の理論派投手・金子弌大の円熟味を増したピッチングに期待したい。

文=松井進作 写真=BBM
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