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「ブルペンは最悪でした」の意味とは?/元阪神・藪恵壹に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は投手編。回答者はメジャー・リーグも経験した、元阪神ほかの藪恵壹氏だ。

Q.プロ野球のピッチャーは、体調が100パーセント万全で投げられる試合は年に数試合しかないと聞きます。調子が悪いときというのはどういう状態になり、それでも抑えるためにどのような工夫をしているのですか。ノーヒットノーランを達成したピッチャーが「ブルペンでは最悪でした」というコメントをしているのも耳にしますが、どういうことでしょうか。(東京都・21歳)



A.相手のいないプルペンでの投球に左右されてはダメ


元阪神・藪恵壹氏


 100パーセント万全の状態で投げられるときというのは、肩のコンディショニングがすこぶる良く、下半身にも上半身にも疲労や張りを感じていないときだと思います。いまならばペナントレースは143試合の長丁場。仮に先発ローテーションを1年守ると、中6日で25〜27試合の登板となりますが、そのすべてで万全の状態に調整をして登板を迎えるのは難しいですね。もちろん先発投手の責任として、調整に全力を注ぎますが、シーズンが進めば進むほど、疲労は蓄積してしまいます。

 ただし、体調がいいからといって100パーセント良い結果が出るかといえば、そうでもありません。なぜなら野球は自分1人でやるものではなく、味方も、相手もあるスポーツだからです。例えば、自分の力を上回る相手バッターのパフォーマンスがあれば、いくら完ぺきだと思っても打たれることは往々にしてあるわけです。

 ブルペンの話が出てきていますのでお話ししますが、よく、「ブルペンは良かった」という話をする選手もいますが、バットを振ってくる相手のいない、結果の求められないブルペンでいくら良くてもそれは自己満足でしかありません(何か目的があって投げている場合は別です)。

 一方「ブルペンでは最悪でした」というのは、思いどおりに制球が定まらない、変化球のキレがない、ストレートの伸びがないなどを感じていたのでしょうが、ここにも同じく対戦相手はいません。いざマウンドに立って、ブルペンと同じように高めにボールが浮いてしまっても、相手が手を出して打ち上げてくれることもあるわけです。ひょっとしたら、自分が感じる以上にボールに力があるのかもしれません。これは失投ではありませんよね。

 逆に「ブルペンでは最悪」という自覚がある選手ほど、いざ試合になれば慎重になるわけで、それが投げミスを防いで好結果につながることもあります。これが状態の悪いときに何とか抑えるための工夫の1つといえると思います。ちなみに、ローテーション投手が100球を投げて、明らかな失投というのは何球あるか分かりますか? 5球程度のものです。それでも、相手のミスショットもあり、勝ち投手にもなれば、そのうちの2球をスタンドまで運ばれれば負け投手にもなるということです。

●藪恵壹(やぶ・けいいち)
1968年9月28日生まれ。三重県出身。和歌山・新宮高から東京経済大、朝日生命を経て94年ドラフト1位で阪神入団。05年にアスレチックス、08年にジャイアンツでプレー。10年途中に楽天に入団し、同年限りで現役引退。NPB通算成績は279試合、84勝、106敗、0S、2H、1035奪三振、防御率3.58。

写真=BBM
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