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広島引退・新井貴浩の忘れられない試合、瞬間

 

広島復帰後の初打席、ファンの大歓声が不安を吹き飛ばした


 プロ野球はオフシーズンまっただ中。この時期は今年限りで現役生活に終わりを告げた引退選手のインタビュー取材が増える。引退選手に対するお決まりの質問の1つが「プロ野球人生の中で思い出に残っている試合は?」というものだ。決勝打を放った試合やケガから復帰後の初勝利の試合などチームの勝利に貢献した試合を挙げる選手が多い。

 先日、広島を引退した新井貴浩氏(以下、新井さん)を取材した際も、上記の定番質問を投げかけてみた。

「まずは、初めて優勝した試合(2016年9月10日の巨人戦=東京ドーム)、優勝した瞬間ですかね。特に黒田(博樹)さんと抱き合ったときというのが、今でも鮮明に思い起こされます」

 最後の打者はショートゴロ。ファーストを守っていた新井さんはウイニングボールを手にした瞬間、頭の中が真っ白になったという。マウンドに駆け寄ってみんなでワァーと喜んだのちに、黒田さんとの熱い抱擁。嗚咽する黒田さんを見たら、自分もスイッチが入り、これまで出ていなかった涙があふれてきたという。

「それと、カープに復帰して初めての試合(15年3月27日のヤクルト戦=マツダ広島)、初めての打席ですかね。応援してもらえるか分からず、ドキドキしながら入った打席」

 一度は広島を出て行った自分に対してファンはどんな反応をするのか、応援されなかったらどうしようという不安な気持ちの中で、ネクストに出た瞬間、ファンからの温かい言葉が迎え入れた。打席に行くまで止むことない大歓声に「久しぶりに足が震えましたよ」。そして、「このファンを喜ばせてあげたい」と強く思ったという。

 ただ実はこの2試合、新井さんのバットから快音は聞かれなかった。
・16年9月10日の打席結果:空三振、右飛、遊ゴロ、一邪飛、二ゴロ(エラー)
・15年3月27日の打席結果:右飛

 それだけに新井さんは「ただ、どっちとも自分の結果はよくなかったんですけどね」。笑いながら繰り返すのが、何とも新井さんらしかった。また、新井さんと言えば、25年ぶりのリーグ優勝へ一気に加速させた16年8月7日の巨人戦(マツダ広島)のサヨナラ二塁打や、“七夕の奇跡”と呼ばれる17年7月7日のヤクルト戦(神宮)の3ランなど、勝負強い打撃で幾度となくチームを劇的勝利に導いてきた。それらの試合よりも、チーム、ファン、すなわち新井さんの“家族”と一体になった試合、瞬間を選ぶのが、これまた新井さんらしかった。

文=菅原梨恵 写真=BBM

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