打ってよし、つないでよし
オールスター休みも明けた、7月22日終了時点で.500。シーズン終盤にやや調子を落とし、最終的には.468に終わったが、今季の
丸佳浩(
広島)は、驚異的な出塁率を長くキープ、一時は歴代最高の1986年
落合博満(
ロッテ)の.487を抜くことも期待されるほどだった。
最終成績の.468は、出塁率が現在の計算法になり、セ・パ両リーグで表彰されるようになった1985年以降では歴代8位の成績になる。
打席結果の内訳を見てみると、何といっても目立つのが、歴代4位タイとなる130個の四球だ。これだけ四球が取れるということであれば、驚異的な出塁率をキープできたのも当然か。3つの死球を加えると、四死球は133になり、今季の安打数の132本よりも多くなる。85年以降の出塁率上位10傑の中では、この現象が見られるのは丸だけだ。まさに、「打ってよし、つないでよし」の打者であったということが言える。
四死球が安打数を上回っての最高出塁率タイトル獲得者は、85年以降のタイトル獲得者では初めてだ。さらにさかのぼっていくと、75年の巨人・
王貞治(112安打、124四球)以来、43年ぶりのこととなる。
ちなみに、歴代四球のベストテンは、4位タイに今季の丸、5位に2001年の
金本知憲(
阪神)が入っているだけで、あとは全部、王貞治の名が並ぶのだが、そのことでも分かるとおり、四球の多さは、ある程度長打力と相関関係がある。例えばホームランがあまりない打者の場合は、バッテリーに、「フォアボールもヒットも同じ」と、ストライクゾーンで勝負する意識が生まれるのに対し、これがホームラン打者だと、「ホームランを打たれるよりはフォアボールのほうがまし」と、ストライクゾーンの外で何とか勝負しようという心理になるためだ。
丸が今季、これだけ四球を選べたのも、ホームランを昨年の23本から39本に激増させた長打力の伸長と無関係ではないだろう。
「今季は、打ちにいった中でもしっかりとボールを選べることが増えた」と丸。もともと好打者として持っていた選球眼に、長打力というファクターが加わったことが、史上4位タイの四球数を生んだといえる。
3年連続MVPへ
これだけ、打って、つないで、広島の3連覇に貢献したのだから、2年連続MVPは獲得して当然だった。ただ、本人は「勘違いしないようにしたい」と常々言っているように、ホームランの本数については興味を示さず、“強いスイングができた結果として飛んでくれたのなら、それでいい”という意識のようだ。MVP受賞後も「自分が理想とするスタイルを忘れないように、来年もやっていきたい」と語っていた。
その後、来季の所属チームを巨人に決め、新たなユニフォームにソデを通すことを選んだ丸。この長打力と選球眼を、そのまま新しい環境でも発揮することができるか。それができれば、次は3年連続MVPという、史上最多タイの記録が待っている。
写真=BBM