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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

10年目を迎える“千葉の韋駄天”荻野貴司に見る夢

 

千葉が誇るスピードスター・荻野のポテンシャルは誰もが認めるところだが……


「あまり楽しく野球をしたことがないので。今までよりは楽しく野球ができていると思いますし、楽しくできればいいなとは思いますね。少しですけど」

 はにかんだ笑顔を浮かべながら、荻野貴司がそう話してくれたのは2018年シーズンが開幕して1カ月あまりが経過したころのことだった。井口資仁新監督が“走塁改革”を旗印に掲げた新生マリーンズにあって、その象徴として斬り込み役を担い、軽やかにダイヤモンドを駆け巡っていた。

 キャリアにおいてフルシーズンを戦い切ったことはない。ルーキーイヤーの2010年、開幕スタメンを勝ち取った荻野は圧巻のスピードでパ・リーグを席巻した。46試合で打率.326、そして25盗塁と圧倒的なペースで次の塁を奪い続けた。

 突如、その進撃が阻まれたのは5月21日のマリンでのヤクルト戦。右ヒザを負傷。残るシーズンを棒に振っただけでなく、それはケガとの戦いに明け暮れる野球人生の幕開けを告げるものとなってしまった。

 翌年も右ヒザ、14年には左肩を骨折し、16年には二度の肉離れ。「ケガをしてイチからやり直す。その繰り返しだったので、技術が積み重なっていかなかったんです」と、苦悩を吐露したこともあったように、フィジカルに不安がないときでもパフォーマンスが安定しない時期も増えていった。

 そんな中で、18年シーズンは一味違った。“継続”の中で迎えられていたからだ。「ケガを0に」の思いで背番号を「0」に変更した前年は、序盤こそ調子が上がらなかったものの、夏場に一軍復帰を果たすと8月は月間打率.299、9月は.356。8月以降の52試合で22盗塁、失敗はわずかに1と、久々に荻野がその能力をフルに発揮し、確かな手応えを感じながら迎えた新シーズンだった。

 カモメの斬り込み隊長として、Aクラス争いを繰り広げるチームをけん引している中で迎えた7月9日の西武戦(ZOZOマリン)。6回に空振り三振に倒れた際、平井克典の投球が右人さし指を受けて骨折。監督推薦で初出場が決まっていたオールスターはおろか、その後も再び戦線に戻ることはできず。チームも不動の一番を失ったことをきっかけに、急激に勢いを失っていった。

「またケガをしてしまい、悔しかったし、申し訳ないという気持ちもあった」と振り返りながら、荻野はこう続けた。「言い飽きたし、言うのも申し訳ないくらい。でも、来年こそケガのないシーズンにしたい」。

 2018年、78試合で残した数字は打率.287、20盗塁、52得点。荻野が凄みを見せるたびに、その直後にケガで離脱を繰り返すたびに、思う。フルシーズンを駆け抜けたときには、どれだけの数字を残すのだろうか、と。プロ10年目となる2019年、見る者のそんな思いに“千葉の韋駄天”は応えてくれるだろうか。

文=杉浦多夢 写真=BBM

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