昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。 東京スタジアムでゴルフをしよう?
今回は『1965年7月12日号』。定価は50円だ。
セは巨人が独走態勢。
打の主役は打撃三冠でトップに立つ、王貞治。ただ、それ以上にファンにアピールしていたのが、“8時半の男”
宮田征典だった。
本人へのショートインタビューから救援の心得を尋ねた個所を抜粋する。
「欲を出さないことでしょう。だから僕は勝ち星のことは一切考えないことにしているんですよ。先発投手が倒れたときのつっかえ棒になりたい。
欲を持つと必ず隙間ができるものです。この打者を三振に取ろうと思うとヒットを打たれるものですよ。
どんな小さい犬でも箱の中に追い詰め、逃げ場がないと噛みついてくる。だから2ストライクに追い込んだときが一番苦しいし、用心したピッチングをしなきゃいけない。追い込んだ打者にどこか逃げ道を作ってやらないと」
完全に牛耳るのではなく、打てそうなコースから球を動かし凡打を誘うの意だろうか。宮田の武器は打者心理を読み切ったかのような投球術。常にポーカーフェイスを崩さず、淡々と投げた。
川上哲治監督は、宮田に“つなぐ”2人の存在も強調する。
「もちろん宮田は大事な切り札だが、宮田が出るまで北川(
北川芳男)、益田(
益田昭雄)がつないでいる。こういうピッチャーを忘れてもらっては困りますよ」
2人はロングリリーフでフル回転中。金田が抜けた後も
城之内邦雄、
中村稔が先発で頑張ってはいたが、川上監督の中には、先発を無理に完投をさせるよりは「いかに宮田につなぐか」を重視したのだろう。今に近い継投スタイルと言える。
パで大独走する南海は、6月21日、岡村和男、村松修、大田稔、清末頴彦4選手に自由契約を言い渡した。次の仕事探しに少しでも早く踏み出してほしいからと新山社長は“温情”を強調。さらに現在63人の支配下選手を50人にするため、シーズンオフにさらなる首切りがあるらしい。
一方、メジャーで活躍中の
村上雅則が所属するジャイアンツの監督に脅迫状が届いたという話があった。
「村上をジャイアンツから追い出せ。さもなくば、お前を殺す」
というものだった。脅迫状を出した男は先の戦争で日本軍にさんざん痛めつけられたことを恨みに思っているらしい。球団ではFBIに監督の身辺警護を依頼したとのことだ。
南海の独走もあってパの観客動員が減少。セ全体の観客動員の約半分となっていた。
閑古鳥の代名詞となりつつあった東京の本拠地東京スタジアムは、試合のない日に草野球にグラウンドを貸し出すサービスを始めた。なお、オフはゴルフの練習場に解放しているらしい。いくら天然芝が冬枯れしていると言ってもこれは……。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM