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【MLB】打撃コーチ3人制、ドジャースの新たな試み

 

フライボール革命により得点圏打率が極端に低くなったドジャースは、打撃コーチを3人制に。これがどういう流れをメジャーに生むだろうか(写真はドジャースのベリンジャー)


 ドジャースが打撃コーチを新たに3人も置くことになった。昨季得点数、ホームラン数、OPSでナ・リーグ1位、7選手が21本塁打以上と、屈指の強力打線だったはずが、ワールド・シリーズではレッドソックス投手陣に沈黙させられた。

 昨季の彼らの試合を見てきた方なら分かると思うが「フライボール革命」に乗ってホームラン攻勢で数字は伸ばしたものの、一方で公式戦での二死での得点圏打率は.199とリーグで2番目に低かった。ポストシーズンも68打数6安打(.088)と悲惨。ホームランだけに頼らず、いかに状況に応じたバッティングができるかが課題となった。

 ウインターミーティングでデーブ・ロバーツ監督は「シフトに対して、反対方向に打ったり、バントをしたり、バットを巧みに操作できるようにする。春のキャンプから取り組む」と宣言した。

 注目すべきは打撃コーチに32歳のロバート・バン・スコイヤックを任命したこと。プレー経験は大学までで、民間の打撃クリニックでJ・D・マルティネス(レッドソックス)を指導、打球角度を意識させ、一流打者にしたことで注目された。32歳の若さで名門球団の打撃コーチである。最新テクノロジーを使ってスイングのメカニックや体の使い方を分析し、いかにボールを強く叩くか、角度をつけるか、科学的に指導できる。

 彼に加え、47歳のブラント・ブラウンを打撃戦略担当コーチ、34歳のアーロン・ベイツをアシスタント打撃コーチに任命した。2人はマイナーで教えてきたコーチである。アンドリュー・フリードマン編成本部長は「MLBでは近年データを生かし、得点力を防ぐことに関しては著しく進歩してきたが、逆に今、得点をいかに上げるかを工夫する時期に来ている。3人のバックグラウンドは異なるが、ダイナミックなコラボになる」と説明した。

 ちなみにエンゼルスも打撃コーチを3人に増員。ブラッド・オースマス新監督は「理由は仕事量が多いから。例えば今の野球ではビデオはとても重要で、一人が専門で当たらねばならない。スカウティングレポートもその日の準備だけでなく、次のシリーズの分も準備し始めなければならない。試合前の練習についても、13人の打者がいて、室内での置きティー、ソフトトス、フィールドでの打撃練習とあって、打撃コーチはとても忙しい。今から10年前、2人の打撃コーチを雇うチームが増えたが、今は3人に移行している」と話していた。

 メジャー打者の三振率は13年連続で悪化、昨季は全打席の22.3パーセントだった。先発投手を早めに交代させる戦い方が広まったおかげで、昨季の打者の対先発投手打率は.250で、1972年(指名打者制導入の前年)以来のワースト記録だった。

 果たして、3人制は打者劣勢の流れを変えるような、新たなトレンドとなるのか。ロバーツ監督はコミュニケーション力が鍵だと言う。監督がバントをさせたいと思っても昨季ドジャースのバントヒット数はわずか5本。24歳のコーリー・シーガー、23歳のコディ・ベリンジャーら若い選手の意識を変えるにはいかにうまく説得するかだ。フリードマン編成本部長は「まだまだ先は長い」と話していた。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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