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川口和久WEBコラム

新生原巨人のカギを握るのは、捕手・阿部慎之助/川口和久WEBコラム

 

阿部の捕手復帰による化学反応は……


 3期目となった原辰徳監督の下、丸佳浩炭谷銀仁朗岩隈久志らを次々に獲得しながらも、人的補償で生え抜きの功労者・内海哲也長野久義が放出となったことで、いろいろ雑音も多くなった。

 ただ、俺は原監督らしいと思った。

 2人のベテランをプロテクトしなかったのも覚悟があってだと思うよ。血を流すことになろうとチームを絶対に変えるんだというね。

 ただ、俺は今年の巨人のカギを握るのは、移籍選手じゃなく、捕手に復帰する阿部慎之助だと思っている。

 確かに捕手復帰は無謀と言えば無謀かもしれない。

 満身創痍で、クビに爆弾がある。原監督も前回の任期で14年のオフに一度は一塁に回した。

 それが今回、捕手復帰を認めたのは、言い方は悪いけど、もう選手人生の先が見えた慎之助に、最後、納得できる“花の咲かせ場所”を与えたんだと思う。

 壊れてもいいから、ここで燃えてみろ! という場所をね。

 もちろん、無条件にスタメンマスクを与えるような甘い監督じゃない。小林誠司、炭谷、大城卓三と敵がいる中に放り込み、「勝ち残れば使う」というスタンスだと思う。

 俺は慎之助が万全なら誠司と慎之助を3:1か2:1で使い、炭谷はサポート役に使うんじゃないかと思っている。

 一つの理由は投手陣の立て直し。

 いまの巨人の投手陣で完全に一本立ちしているのは、菅野智之だけ。補強選手はいるけど、完全に世代交代の時期にある。

 若い投手に慎之助とバッテリーを組ませ、経験を伝えてほしいというのもあると思うよ。あいつは投手に対し、強い言葉もかけられるしね。

 俺は投手コーチをしていたから分かるが、慎之助の投手陣への影響力は本当に大きい。以前、俺は試合中にマウンドに行くと、慎之助に話しかけるようにしていた。

 テンパっている投手をいくら怒鳴っても「ハイ」「ハイ」と言いながら右から左になることが多い。だから俺は慎之助をフィルターにし、「そうだよな、慎之助」と最後、彼に話を振った。そこで彼がうなずくだけでも違ったんだ。

 慎之助はコーチにも注文を出すキャッチャーだった。

 よく言われたのが「2ボール0ストライクから簡単にストライクが取れる変化球を教えてやってください」というものだった。
 俺はいつも「変化球はそんなに簡単に覚えられないよ」と言ってたけど、甘い真っすぐでストライクを投げると、狙い打たれることも多いカウントだし、際どいコースを狙ってボール球になったら3ボールだしね。

 勝負球にもカウント球にもなる変化球があれば、投手がぐっと楽になるのは確か。

 ブランクはあるけど、捕手としてのインサイドワークはいまでも間違いなく、誠司より慎之助が上。でも全部試合に出たら間違いなく、壊れてしまう。

 原監督は、そのあたりを見極めながら使っていくんじゃないかな。

 あいつも40歳のシーズンか。昔のようにできないことは間違いないが、一時代を築いた男であることは間違いない。
 
 最後に、どんな花を咲かせてくれるのかな。
 
 加えるなら、誠司の意地にも注目だね。
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