昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、平日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。 殺人スライディングの波紋
今回は『1965年8月23日増大号』。定価は60円だ。
「にんにく対まむし、異常な敵がい心」
派手なタイトルは南海・野村克也(にんにく)と阪急・
スペンサー(まむし)のホームラン王争いだ。
最初に書いておくが、なぜ野村がにんにくで、スペンサーがまむしかの言及はない。
8月6日現在、スペンサーが29本塁打、野村が24本塁打で、野村の5年連続ホームラン王に黄色信号が灯っていた。
この年、スペンサーと野村が仲良く並ぶ写真が小社にも何枚かある。
実はオールスター第1戦の際、カメラマンが2人に依頼したものだった。スペンサーに頼んだ際の返事は、
「いくらくれるんだ」
だった。結局5000円を渡したらしいが、当時、時間をそれなりに割いての取材はともかくオールスターでの写真撮影で謝礼を求めるとは異例中の異例。記者たちも大ブーイングだった。
しかもスペンサーに対する反感が南海以外のチームにも広がっていた。これはスペンサーの危険スライディングによるものが大きい。
遊撃手・
小池兼司の胸のあたりにスパイクが向けられた際、南海・
鶴岡一人監督が「あんな殺人的なプレーが許されていいのだろうか」と吐き捨てたが、南海以外でもスペンサーのラフプレーに怒りを感じているチームは多い。
スペンサー自身は「大リーグでは普通のこと。プレーヤー同士ケガをさせるようなことはしていない。ケンカではないんだからスパイクを向けることはしない。ヒザを曲げてももから体当たりをしている」と言い、ケガをさせた選手に謝罪したことで自身に悪意がないことを強調したが、その謝罪した相手がブルーム。正直、納得はしづらい。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM