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早大・小宮山悟監督からの熱き野球部“入部応募”

 

早大・小宮山監督は芝浦工大柏高(千葉)から二浪を経て、早大に入学した苦労人。険しい道を歩んできただけに、母校のWASEDA愛は誰よりも強いものがある


 新年が明け、大学入試を控えた受験生にとっては、ラストスパートだ。精神的にも最もつらい時期だからこそ、エールを送り届けたいと思う。1月1日付で就任した早大・小宮山悟監督からの熱き「入部応募」である。

「何をするために、早稲田大学に来たか? との質問に対して『ワセダで野球をやりたい!!』という部員を募集中です!!」

 自身は芝浦工大柏高から二浪を経て、WASEDAの門をたたいた。予備校通いの合間には、図書館で早大野球部の歴史を学び、勉強のモチベーションにしていたのはあまりにも有名なエピソードである。入学後は人一倍の練習量でエースに上り詰め、ドラフト1位でロッテに入団。NPB通算117勝を挙げたのも、努力の賜物だ。小宮山監督はいくつもの困難を、自らの力で乗り越えてきた「浪人の星」なのである。

 なぜ、浪人経験者は苦労するのか? 説明するまでもなく、ブランクだ。日々、机に向かってきたわけだから、体力低下が顕著。せっかく夢の野球部に入っても、練習についていくだけで大変。定位置争いという土俵に上がるまでには、幾多のハードルが待ち構える。

 かつての早大は、浪人経験者でも地道に練習を重ねて結果を残せば、活躍できる土壌にあった。しかし、時代は大きく変わった。早大の系属校である早実が推薦入試を導入。優秀な選手を高校入試の段階で入学させ、「7年計画」での育成が可能となった。また、早大ではスポーツ推薦入試を実施。毎年4人程度という少数精鋭だが、甲子園などの大舞台で実績のある高校生の入学が実現している。こうした背景もあり早大において、浪人経験者は25人のベンチ入りですら厳しい状況にある。

 とはいえ、東京六大学野球とは、一般入試や浪人経験者でも、元甲子園球児ら一流選手とともに神宮球場でプレーできるのが、魅力として残る。特にスポーツ推薦制度のない東大、慶大はブレない“独自路線”を歩む。決して、早大も浪人組の入部を閉ざしているのではない。小宮山監督は冒頭のコメントのように、自身のような思いで早大を目指す浪人組を大歓迎する。過去の実績に関係なく、すべては実力主義。横一線での競争で、浪人組も夢を見ることができる。その意図はこうである。

「(メンバーに)1人いるだけで、周りの士気が変わってくる」

 人生をかけて、超難関の早大入試を突破。そして、野球部に入部するという覚悟は半端ではない。だからこそ、WASEDA愛がとてつもなく強い。こうした一般入試組の熱き思いとスポーツ推薦組、内部進学組らが融合すれば、チームとして大きな力を発揮する。

 メンバーには、入れないかもしれない。だが、汗にまみれ、その過程を間近で見ることは必ず、プラスに働く。部内のムードを変貌させるパワーがあるのだ。努力の末に、神宮球場の場内アナウンスで浪人経験者がコールされれば、スタンドがざわつくのは間違いない。コアな大学野球ファンならば、出身校や過去のキャリアを聞くだけで「どんな選手なのか?」と、瞬く間に、共感を得るのである。

 大学で野球を続けたいという希望を持つ、全国の受験生へメッセージを送りたい。浪人を理由に早大野球部への入部(入試)をあきらめるのではなく、果敢に挑戦してほしいと思うのだ。早大の新指揮官は「小宮山二世」の入部を、首を長くして待っている。

文=岡本朋祐 写真=高塩隆
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