4年間にわたって日本ハムに在籍し、2019年シーズンからは
ロッテでプレーすることが決まったレアード。2016年の
広島との日本シリーズではMVPにも輝き、栗山ファイターズに欠かせない優良助っ人として存在感を発揮した。
それだけに退団が決まった際は栗山英樹監督も「個人的にはすごく寂しい。僕にとっては一生忘れられない外国人選手」と人一倍思い入れのあるレアードとの別れを惜しんだ。栗山監督とレアードが4年間でつむいできた絆。異国の地からやってきた助っ人にとってもその出会いはとても大きなものであり、栗山監督でなかったら今日のレアードも誕生してなかったとも思う。
こんなこともあった。日本ハムの取材現場では、試合前の練習時に栗山監督と記者によるカコミと呼ばれる時間が必ずある。たわいもない雑談から始まり、前日やその日の試合のことなどをベンチで話す。その際に時折、満面のスマイルで「乱入」してくるのがレアードだった。ある日の走り書きしていた取材メモを書き起こしてみる。
レアード クリヤマカントク、オハヨウゴザイマス、ゲンキデスカ?
栗山監督 元気じゃないよ、レアードが打たないからね
レアード オオ……デモ、モウダイジョウブ
栗山監督 本当かよ(笑)
レアード ハイ、ガンバッテ!!
栗山監督 イヤ、オマエが頑張るんだよ(全員爆笑)
レアード ガンバリマス、マカセテ!
栗山監督 大丈夫かよ、アイツ。えっと、何の話してたっけ?(笑)
どうしてもチームの負けがこんでいるときなどは重苦しくなるカコミも、いつの間には和やかな雰囲気になり、栗山監督の表情も自然とやわらいだことは多い。それをレアードが意図的にやっていたかは定かではないが、このやりとりを見ているだけで2人の距離感、関係性、レアードがいかに栗山監督を慕っていたかが伝わる。
2015年に来日した際もオープン戦、開幕してからもレアードは打撃の調子が上がらずに低迷。周囲からも新助っ人に対する風当たりが強くなっていた。それでも栗山監督は「どうしても日本の野球に慣れるのに時間がかかるもの。それにどんなに苦しい中でも、常にあれだけ前向きにやれる姿勢であったり、あの元気こそがレアードの良さ。こっちが彼から学んでいることもたくさんある」と起用し続け、その後の打棒爆発へとつながった。それだけにレアードも指揮官への感謝の言葉をたびたび口にし、その絆は4年間で深いものとなっていった。
現時点では日本ハムでの印象が強すぎて、まだロッテのユニフォームを着て戦うレアードの姿をなかなか想像できないが、今度は敵同士で戦う指揮官と日本で花開いた助っ人。その“再会”の日をいまは楽しみに待ちたいし、2019年シーズン初めてのロッテ戦の試合前のカコミ取材では、指揮官に「今日のレアード対策は?」とぜひ聞いてみたいと思っている。
文=松井進作 写真=BBM