昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。 スペンサーは大打者なのか
今回は『1965年9月20日号』。定価は50円だ。
東映の
尾崎行雄が両リーグ20勝一番乗り。前年に続き、2年連続の大台となる。怪童と言われ、新人年の62年の優勝、日本一に貢献した右腕。到達は9月4日の阪急戦だから、まだ20歳だ。
8月31日の練習中に首筋を痛めて心配されていたが、この日は延長11回を投げ抜き無四球完封。最後は
萩原千秋のサヨナラ打で東映が勝利した。
ただ、連続写真も出ていたが、新人イヤーより、かなり腕が下がっていたようにも見える(もともとオーバースローではなく、スリークオーターではあった)。
東映では尾崎の浪商の先輩、暴行事件から謹慎明けの
張本勲がなぜかイライラしている。
2日の西鉄戦(後楽園)で三塁側から盛んにヤジられ、カッカしていたのもあるのだろうが、試合のダメ押しとなる2ランを放ち、三塁ベースを回ったところでスタンドに向かってツバを吐くような仕草。東映ファンは
ヤンヤの歓声だったが、怒ったのは東映の
水原茂監督。
試合後、監督室に呼び、「お前はスタープレーヤーなのを忘れてはいかん」とたしなめた。
阪神戦で関西に来ていた巨人・
王貞治が南海・
野村克也の自宅を訪問した記事もあった。
9月1日現在、王は本塁打、打点のトップで打率は
中日・
江藤慎一の.337に次ぐ2位(.330)。野村は打率、打点がトップでホームランは阪急・
スペンサーの34本に2本差32本で2位。
どちらが戦後初の三冠王になるのかと話題になっていた。
2人の対談もあったが、敬遠攻めですっかり調子を狂わせたスペンサーの話もあった。
王は、「この間、通訳を通じてだけど話したとき『オレの後に打つやつが全然打たないからオレは歩かされるんだ』と言っていた。同じチームでそういうことを言ったらだめですよね」と話したが、野村は「一生懸命考えて野球をしている。あれは立派や。野球に対して熱心だね」とスペンサーに対し、同情的だった。
一つ見方として面白いなと思った個所がある。野村の言葉だ。
「ボール球を1球でも投げるとブツブツ言うからやりづらい。稲尾(
稲尾和久。西鉄)が言っていた、スペンサーは大打者じゃない、と。なぜかというと、ストライクしか打てんバッターやと。本来大打者はボール球を打つのがうまいというからね。
ただ、スペンサーはヤマを張るのがうまい。一番苦手なのは速い球や。あいつはホームランを狙わんと打てんバッターやしね」
なんとなくスペンサーという打者像が見えてくる。おそらくは、本来ホームランバッタータイプではないが、日本の狭い球場もあってホームラン狙いに徹しているのではないか。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM