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背番号物語2019

【背番号物語2019】「#14」伝説から始まった栄光の投手ナンバー

 

背番号は、ある選手が引退しても、またある選手に受け継がれていく。2019年も新たな後継者が誕生した。その歴史を週刊ベースボールONLINEで振り返っていく。

プロ野球の歴史とともに



 プロ野球の歴史は、この男から始まったと言っていいだろう。沢村栄治。1934年、その快速球とドロップで来日した全米選抜を本気にさせた弱冠17歳、唯一の日本人投手だ。歴史に「もしも」はないが、この日米野球の成功がプロ野球誕生の機運を加速させたことを考えると、沢村がいなかったら少なくとも数年は誕生が遅れたかもしれない。その沢村の背番号が「14」だ。

 沢村は度重なる応召で肩とヒジを痛めて巨人を解雇され、3度目の応召で戦没。「14」が永久欠番となったのは終戦から2年後の1947年のことだった。戦後の巨人で2人の選手が「14」を着けたため、背番号の系譜における複数選手のうち、最初の選手が永久欠番となっている唯一の例となっている。

 南海の木塚忠助中日谷沢健一ら好打者もいるが、やはり「14」は好投手の背番号だ。沢村と同じ右腕が多く、近鉄の阿波野秀幸や中日の今中慎二は貴重な左腕だ。右腕には、近年ではロッテで足かけ16年にわたって「14」を着け続けた“投げる精密機械”小宮山悟や、西武石井貴ソフトバンクでクローザーを務めた馬原孝浩がいる。クローザーの先駆者となった中日の板東英二や南海の佐藤道郎らリリーバーも少なくない。佐藤と同時期のパ・リーグには剛速球で鳴らした阪急黄金時代の山口高志もいた。

【12球団・主な歴代「14」】
巨人 沢村栄治★、今泉勝義坂本茂

阪神 菊矢吉男木下勇中村勝広弓長起浩能見篤史

中日 板東英二、谷沢健一、今中慎二、朝倉健太谷元圭介

オリックス 西村正夫阿部八郎宮本幸信、山口高志、吉田一将

ソフトバンク 木塚忠助、佐藤道郎、若田部健一、馬原孝浩、加治屋蓮

日本ハム 宇田東植川原昭二酒井光次郎井場友和加藤貴之

ロッテ 佐藤平七、山根英俊、長島哲郎、小宮山悟、大谷智久

DeNA 大石正彦関根知雄パチョレック森中聖雄石田健大

西武 安部和春五月女豊、石井貴、小野寺力増田達至

広島 大田垣喜夫外木場義郎津田恒実澤崎俊和大瀬良大地

ヤクルト 高橋輝高山忠克宮本賢治秋吉亮高梨裕稔☆(2019年〜)

楽天 河本育之牧野塁佐竹健太則本昂大
(☆は2019年、★は永久欠番)

広島にも好投手の系譜が


広島・大瀬良大地


 古くは52年に18歳5カ月の高卒新人ながら開幕投手を務めて完投で初登板初勝利を飾った広島の大田垣(のち備前)喜夫がいて、広島でその後継者となったのが外木場義郎と津田恒実、そして現役の大瀬良大地だ。

 外木場は完全試合を含む3度のノーヒットノーランを達成し、沢村のプロ野球記録に並んだ。病魔に倒れた津田も気迫のストレートで真っ向勝負を繰り広げ、“炎のストッパー”と呼ばれた伝説の投手。広島における津田に対する畏敬の念は、沢村に対する巨人のそれに勝るとも劣らない。大瀬良は2018年に最多勝、最高勝率の投手2冠で3連覇に貢献し、巨人の菅野智之と沢村賞を争っている。

 現役では、巨人のライバルでもある阪神ではベテラン左腕の能見篤史が息の長い活躍を続け、楽天ではエース右腕の則本昂大が三振の山を築いてファンを魅了している。未知数の若手も多い。沢村の悲劇は繰り返してはならないが、「14」の投手が好投するたびに、その伝説は継承され、更新されていく。

写真=BBM
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