週刊ベースボールONLINE

ベースボールゼミナール

少しでも速いボールを投げるには?【前編】/元阪神・藪恵壹に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は投手編。回答者はメジャー・リーグも経験した、元阪神ほかの藪恵壹氏だ。

Q.中学で硬式野球をしています。少しでも速いボールを投げたいのですが、そのためにはどのようなリリースの仕方をするのがいいのでしょうか。(東京都・14歳)



A.速いボールは腕の振りのスピードに比例します


イラスト=横山英史


 シンプルな質問ですが、ピッチャーなら誰もが速いボールを投げたいと思うもので、一部の選手を除いてほぼすべてのピッチャーが直面する問題でしょう。質問の方は中学1年生もしくは2年生と推測できますが、気持ちは非常によく分かります。

 まず、速いボールというのは、腕の振りのスピードに比例します。しかし、腕というのは、それだけを強く振ろうと思っても、振れるものではありません。このコーナーで何度か紹介した人類学者のニール・ローチ(Neil Roach)の言葉ですが、「腕だけが腕なのではない。足から手の指先に至る全体なのだ」が、投球とは何かを言い得ていると思います。

 質問の方は指導者の方に「下半身を使ってなげなさい」と教えられた経験はないでしょうか。実はニール・ローチの言葉とこれは同じことで、投球をするにあたり、大事なのは腕だけで投げるのではなく、下半身、もっと簡単に言うと、足で生み出したパワーを、効率よく体幹を通して、上半身、ひいてはボールをリリースするときの指先に連動(伝達)していくことです。しかも、ロスなくこれを行うことができれば、腕、指先は勝手に速く振れていきます。

 つまり、腕は意識して無理やり振るものではないのです。意識しても速く振ることはできないですし、余計な力が加わって故障の原因にもなりますからね。そういう戒めもあって、ことさら下半身を強調して「下を使って投げなさい」という指導になっていくのです。

 これらを念頭に置いて、どのようなトレーニングを積めばいいかを考えましょう。例えばランニングやウエート・トレーニングによる下半身の強化も必要でしょうし、股関節周りの柔軟性を高めることも忘れてはいけません。体幹を強くすることもそうですし、肩甲骨の柔らかさも不可欠です。また、ケガを予防することを考えれば肩などのインナーマッスルを鍛えなければいけません。

 それらをこなすとともに、シャドーピッチングなどで体重移動や、上半身への連動を身に付けていくことも必要ですね。最後、リリースの際には2本の指で、ボールの縫い目にしっかりと引っ掛けてスピンをかけてください。これは重要なポイントで、リリースが優しいとスピンの効いたボールは行きませんよ。

<後編に続く>

●藪恵壹(やぶ・けいいち)
1968年9月28日生まれ。三重県出身。和歌山・新宮高から東京経済大、朝日生命を経て94年ドラフト1位で阪神入団。05年にアスレチックス、08年にジャイアンツでプレー。10年途中に楽天に入団し、同年限りで現役引退。NPB通算成績は279試合、84勝、106敗、0S、2H、1035奪三振、防御率3.58。

写真=BBM
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング