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ベースボールゼミナール

少しでも速いボールを投げるには?【後編】/元阪神・藪恵壹に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は投手編。回答者はメジャー・リーグも経験した、元阪神ほかの藪恵壹氏だ。

Q.中学で硬式野球をしています。少しでも速いボールを投げたいのですが、そのためにはどのようなリリースの仕方をするのがいいのでしょうか。(東京都・14歳)



A.ピッチャーには指先の感覚に繊細さが求められる


イラスト=横山英史


 前編では速いボールというのは、腕の振りのスピードに比例し、大事なのは腕だけで投げるのではなく、下半身で生み出したパワーを、効率よく体幹を通して、上半身、ひいてはボールをリリースするときの指先に連動(伝達)していくことだと説明しました。それに付随して求められるトレーニングについても合わせて解説しています。

 実際の投球動作では、最後、リリースの際に2本の指で、ボールの縫い目に引っ掛けて、しっかりと押し込むようにスピンをかけることが重要なわけですが、この指先に求められる感覚の繊細さはピッチャーならではの能力で、質の良いファストボールが投げられるか、投げられないかを左右すると思います。例えば、同じ140キロのボールでも、指先の押し込みの感覚に繊細でない野手が投げたボールはいわゆる棒球となり、これを意識しているピッチャーが投じる、伸びるようなボールとは軌道も威力も異なります。

 ここでピッチャーがリリース時に指先に掛かる感覚を体感する簡単な方法を紹介しましょう。カベに向かって立ち、利き腕をヒジを曲げずに真っすぐに伸ばして壁面に手の平をつけてください。この際、利き腕とは逆の手で、利き腕の人さし指と中指を立てるように後ろに引っ張ります。このときに利き手の人さし指と中指に感じられる感覚が、ボールをリリースする際に両指に掛かる感覚と同じだと言われています(※実際にリリースの際に2本の指が後ろに引っ張られるわけではありません。あくまでも感覚の問題です)。

 私もこれを体感してから、意識してより良いスピンをかけられるようになりました。プロの世界では、各球場本拠地や練習場にまでトラックマンシステムが導入されており、ピッチャーが投じるボールのスピン量は即座にデータ化され、改善点などが分かるような便利な時代になりましたが、われわれはこうやって体感して、自分の指先の感覚を磨いてきました。

 あらためてですが、速いボールを投げるために、無理やり腕を振る必要はありません。これまで説明してきたことを再確認してもらい、腕を振るために必要な土台作りから始めてください。そして投げ終わった後のケアも重点的に。

<完>

●藪恵壹(やぶ・けいいち)
1968年9月28日生まれ。三重県出身。和歌山・新宮高から東京経済大、朝日生命を経て94年ドラフト1位で阪神入団。05年にアスレチックス、08年にジャイアンツでプレー。10年途中に楽天に入団し、同年限りで現役引退。NPB通算成績は279試合、84勝、106敗、0S、2H、1035奪三振、防御率3.58。
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