背番号は、ある選手が引退しても、またある選手に受け継がれていく。2019年も新たな後継者が誕生した。その歴史を週刊ベースボールONLINEで振り返っていく。 名捕手の宝庫
戦後、森昌彦に継承されて、V9という空前絶後の黄金時代を謳歌した巨人で司令塔の森昌彦が背負い、「27」は球界に捕手の背番号として普及。その後はチームを問わず多くの名捕手が「27」の後継者となる。だが、その起源は、巨人の初代でもある
吉原正喜だ。
「昨年までキャッチャーをやっていました。今年から捕手をやらせてもらいます」
戦局の悪化により球界からカタカナを追放しようということになった1941年の開幕前、激励会でエスプリの効いた……もとい、才気煥発な挨拶で、暗い時代に爆笑を誘ったのが、巨人の吉原正喜だ。こんな性格だから誰からも愛され、試合では闘志あふれるプレーで豪快伝説には事欠かず。熊本工でバッテリーを組んでいた
川上哲治とともに入団したが、のちの“打撃の神様”も吉原の“おまけ”だったと言われる。だが、この年のオフ、応召して大陸へ。44年、ビルマで玉砕した。
中嶋聡や
細川亨ら、複数チームで「27」を着けた名捕手も少なくない。司令塔として
西武黄金時代を支えた
伊東勤の後継者だった炭谷銀仁朗は、迎えた2019年、FAで移籍した巨人で森らの後継者に。一方、その人的補償で西武へ移籍した
内海哲也は、近年は少数派となっている投手の「27」となっている。
【12球団・主な歴代「27」】
巨人 吉原正喜、森昌彦、
福王昭仁、
宇佐見真吾、炭谷銀仁朗☆(2019年〜)
阪神 松広金一、
若生智男、
嶋田宗彦、
山田勝彦、
尾仲祐哉☆
中日 伊藤四郎、水谷伸久(寿伸)、
大河原栄、
谷繁元信、
大野奨太☆
オリックス 沖勝巳、
戸倉勝城、中嶋聡、
日高剛、
アルバース☆
ソフトバンク 河西俊雄、
服部武夫、
門田博光、
吉永幸一郎、
グラシアル☆
日本ハム 深見安博、
皆川康夫、
大宮龍男、川名慎二、中嶋聡
ロッテ 三宅宅三、
八木沢荘六、
牛島和彦、
古谷拓哉、
山本大貴☆
DeNA 佐々木吉郎、
平松政次、
竹田光訓、
久保康友、
上茶谷大河☆(2019年〜)
西武
関口清治、
竹之内雅史、伊東勤、炭谷銀仁朗、内海哲也☆(2019年〜)
広島 長谷部稔、
山本浩司、
金城基泰、
原伸次(伸樹)、
會澤翼☆
ヤクルト 町田行彦、
根来広光、
加藤俊夫、
大矢明彦、
古田敦也 楽天 小倉恒、
河田寿司、
岡島豪郎☆
(☆は2019年)
大洋のエースからDeNAのドライチ右腕へ
ヤクルト・古田敦也
古田敦也を最後に欠番となっているヤクルトでは、大矢明彦も長く背負った正捕手ナンバーで、後継者の成長を待つ。谷繁元信はFAで移籍した中日で初めて「27」となって、古田と同様に監督としても着け続けた。その中日はFAの大野奨太を迎えて後継者とし、大野も初めて「27」の重責を背負う。
捕手では“ゴール”とも言える「27」だが、好打者の“スタート”となったケースもある。広島の山本浩二(浩司)、南海の門田博光は「27」でキャリアをスタートさせ、ともに球史に残る長距離砲に成長した。
少数派の投手では2投手が完全試合を達成している。規定投球回到達のために登板した試合で達成したロッテの八木沢荘六と、1安打でも許せば降板という“偵察登板”の予定が1人の走者も許さないまま達成した大洋の佐々木吉郎だ。大洋では平松政次が継承して通算200勝。「27」の系譜で唯一無二の存在感を放つが、DeNAではドラフト1位で19年に入団した上茶谷大河が後継者に。栄光のナンバーとともにチームの期待も背負う。
写真=BBM