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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

弁護士は過去の夢。4年後のプロ入りを目指す早大新入生の142キロ右腕

 

今年4月、早大に入学する142キロ右腕・名倉(日大豊山高)の持ち球はツーシーム、カットボール、スライダー。すべての精度が高い


 神宮に良いイメージはないという。無理もない。センバツ出場をかけた2年秋の東京大会。右腕・名倉侑田を擁す日大豊山高は日大三高に7回コールド敗退(2対12)を喫した。最後の3年夏。関東一高との東東京大会5回戦では、7回コールド負け(4対14)により3年間で、甲子園の土を踏むことはできなかった。舞台はいずれも神宮球場。2度の屈辱を味わった、ほろ苦い場所なのである。

 とはいえ、高校3年間、ライバルの存在が名倉の成長を後押しした。中学時代に在籍した狛江ボーイズでは関東大会に出場も、立場は2番手投手。主戦には右腕・勝又温史がおり、エースの座を手にすることができなかった。

 勝又は日大鶴ヶ丘高に進学。2人の道は分かれたが、名倉は常にかつての盟友を意識してきた。2年秋の段階では実績において、ブロック予選で敗退した勝又を大きく上回ったものの「翌春には152キロを出して……」と、気になる存在はドラフト候補に浮上した。

 名倉は無類の読書愛好家だ。高校の授業においては古典、現代文など、秀才右腕は活字と向き合うことが大好き。本気で将来の職業として、弁護士の夢を描いていたことがある。

 メディアの間では、司法への道へ進みたいという名倉の「夢」が、一人歩きした。突っ込んで確認してみると「確かに2年くらいまで、そういう時期はありました」と明かした。

 名倉は野球で勝負すると決めた。早大アスリート選抜入学試験に合格。野球部で4人という狭き門を突破したのである。東京六大学リーグは神宮が本拠地。「苦手意識があるので、克服していきたい」と語るのも本音だ。勝又は昨年10月のドラフトでDeNAから4位指名を受け、プロとしてスタートしている。名倉としては、発奮材料がそろったと言える。

 2月5日から早大の練習に参加し、今後の4年間に胸の高鳴りが抑え切れなかった。最速142キロは成長過程。ツーシーム、カットボール、スライダーも精度が高く、今後のノビシロは十分である。同じ右腕投手で、今春から早大を指揮するNPB通算117勝の小宮山悟新監督の下で学べるのは財産だ。

「勝又には追いつけ、追い越せの気持ちです」

 すでに弁護士は過去の夢。現在は「プロを目指して頑張っていく」と、目標が明確である。

「東京六大学で優勝するため、チームに貢献するのが目標です」

 高校時代、きっかけを与えてくれた神宮のマウンドで成長した姿を見せつけ、心にある負のイメージを一変させる。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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