背番号は、ある選手が引退しても、またある選手に受け継がれていく。2019年も新たな後継者が誕生した。その歴史を週刊ベースボールONLINEで振り返っていく。 江藤から始まる多彩なドラマ
現役では攻守に安定感のある内野手が多い。リーグ3連覇の広島で
菊池涼介が堅守のイメージを強くしたが、2018年に47本塁打を放って
西武10年ぶりのリーグ優勝に貢献、MVPに輝いた
山川穂高が強打の印象を復活させた。
現役の好打者では
楽天に
銀次、
ヤクルトで15年に打点王となった
畠山和洋がいるが、もともと菊池の広島も
長内孝から好打者の系譜で、これを継承した長距離砲の江藤智は
巨人、西武で「33」を背負い続けており、山川も江藤の後継者となる。
江藤がFAで広島から移籍してきたとき、現役時代の背番号を並べた「33」を着けていたのが
長嶋茂雄監督だ。江藤に「33」を譲ったことで、再び栄光の「3」を背負って勇退まで指揮を執ることになった。ちなみに、現役時代の強打で球史に名を残した「33」の監督は2人目。元祖は
ロッテの
山内一弘監督だ。
19年は3チームで外国人選手が継承する珍事に。江藤のいた巨人では
マギーから外国人選手によるリレーだが、今後は助っ人の印象が強くなる可能性も秘めるナンバーだ。
【12球団・主な歴代「33」】
巨人 原田俊治(治明)、長嶋茂雄(監督)、江藤智、マギー、
ビヤヌエバ☆(2019年〜)
阪神 上田正、
森光正吉、
池内豊、
大野久、
糸原健斗☆
中日 杉山悟、
吉沢岳男、
郭源治、
小山伸一郎、
祖父江大輔☆
オリックス 梶本隆夫、
平井正史、
高木康成、
縞田拓弥、
メネセス☆(2019年〜)
ソフトバンク 窪義幸、
久保寺雄二、
斉藤学、
星野順治、
増田珠☆
日本ハム 毒島章一、
村井英司、
矢貫俊之、
大田泰示、バーベイト☆(2019年〜)
ロッテ
若林忠志(兼任監督)、山内一弘(監督)、
田子譲治、
橋本将、
南昌輝☆
DeNA 高松延次、
高橋重行、
市川和正、
古木克明、
乙坂智☆
西武
菊川昭二郎、
立花義家、
玉野宏昌、江藤智、山川穂高☆
広島 飯浜孫美、長内孝、江藤智、
鞘師智也、菊池涼介☆
ヤクルト
森谷良平、
斎藤良雄、島原公二、
中西親志、畠山和洋☆
楽天
平石洋介、銀次☆
(☆は2019年)
勇者が残した好投手の伝説
阪急・梶本隆夫
貴重な外野手の筆頭は、1954年から71年までの長きにわたって背負い続けた東映の毒島章一だろう。900打席連続無併殺打をマークした好打者だ。穏やかな性格ながら、長く東映の主将として
張本勲や
大杉勝男らの“暴れん坊”たちを取りまとめて“ミスター・フライヤーズ”と呼ばれた好漢でもある。
1リーグ時代は稀少だった「33」は、2リーグ制となって早々、投打に開花する。オリックスはメジャーから復帰した
田口壮が着けてからは野手が続くが、阪急の低迷期から黄金期までの20年間を「33」で投げ抜いた左腕の梶本隆夫がいる。9連続奪三振も、低迷期のシーズン15連敗も、ともに現在も残るプロ野球記録だ。通算254勝255敗。名球界入りしながら負け越した唯一の投手でもある。
中日の初代でもある大砲の杉山悟がいた。中日は低迷期の正捕手だった吉沢岳男らを経て郭源治が「30」から“移籍”し、クローザーとして88年に
星野仙一監督の初優勝に貢献、MVPに輝いてからは、投手がリレーする少数派の系譜に。中日で初めて先発ローテーションに入り、カムバック賞に輝いた平井正史も「36」からの“移籍”だったが、もともとはオリックスで95年のリーグ優勝を支えた「33」のクローザーだった。
写真=BBM