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プロ野球1980年代の名選手

クロマティ ベリー・エキサイティング!80年代G最強の助っ人/プロ野球1980年代の名選手

 

1980年代。巨人戦テレビ中継が歴代最高を叩き出し、ライバルの阪神はフィーバーに沸き、一方のパ・リーグも西武を中心に新たな時代へと突入しつつあった。時代も昭和から平成へ。激動の時代でもあったが、底抜けに明るい時代でもあった。そんな華やかな10年間に活躍した名選手たちを振り返っていく。

“やんちゃ坊主”だったが……



 1980年から82年までプレーしたロイ・ホワイト、その後釜として83年から84年までプレーしたレジー・スミス。ともにメジャーの実績も抜群で、巨人らしい豪華な助っ人だった。ただ、どちらも30歳代の後半になってからの来日で、今風に言えば“アラフォー”。最盛期を過ぎていたことは否めなかった。だが、84年に加入したウォーレン・クロマティは30歳。現役バリバリのメジャー・リーガーが働き盛りで来日したことは日米の球界関係者を驚かせた。

「伝説の王(王貞治)サンが(84年に助監督から)監督となって呼んでくれたから。それに、大麻まみれの米球界に失望したのもあるよ」

 と語りながら、こう続けてニヤリ。

「年俸が一番よかったのも確かサ」

 少年時代は貧困の中で育った。野球は、そんな貧困から這い上がるためのツールでもあった。72年の第1回日米大学野球で来日して、山下大輔(のち大洋)や長崎慶一(のち啓二。大洋ほか)らと対戦しているが、ガリガリに痩せていて、足の速さが目立つ程度の選手だった。

 エクスポズのレギュラーとなったのが77年だ。中距離ヒッターだったが、球場の狭い日本では、それでも十分なパワーだった。ただ、当時の少年ファンが衝撃を受けたのは、メジャーの実績など難しいことではなく、その極端なクラウチングスタイルではないか。リトルリーグなどでは難しくても、空き地の草野球などでガムを噛みながらマネをした当時の野球少年は少なくない気がする。そして、そのほとんどが「よくあれで打てるな」と思ったのではないだろうか。

 来日1年目から35本塁打を放ち、勝利打点14をマークして当時はタイトルだった最多勝利打点に輝く。2年目となった85年は打率3割もクリアしながら、32本塁打、自己最多の112打点。翌86年には自己最多の37本塁打に打率.363と、パワーと安定感を両立したが、2年連続で三冠王となった阪神のバースに阻まれて、打撃3部門でのタイトルには届かなかった。

 ホワイトらが数年で去った一方で、若くして来日したこともあって長くプレーを続けた。ホワイトらが“紳士”だったのとは対照的な“やんちゃ坊主”でもあったが、それが「紳士たれ」の不文律がありながらも明るい雰囲気だった当時の巨人とマッチ。観客と一緒になってバンザイ三唱をするだけならまだしも、相手チームを侮辱するようなパフォーマンスも。

「メジャーでは侮辱になるから絶対にやらない。日本ではファンが喜ぶからやっただけ」

 と言い切る(のち自粛)など、しばしば“上から目線”が透けて見える選手でもあった。果敢なヘッドスライディングなど攻撃面では闘志あふれるプレーを見せたが、外野守備は悪くないものの雑。87年には西武との日本シリーズで緩慢な守備を突かれ、得点だけでなく、結果的に西武の日本一を許す失態も演じている。

史上初の“打率4割”


 87年6月17日の中日戦(熊本藤崎台)で死球を与えた宮下直己に突進、乱闘に発展した一方で、広島との優勝争いの渦中、10月2日のヤクルト戦(神宮)では頭部に死球を受けて病院に運ばれながらも、翌3日の同カードでは病院からそのまま球場入り。6回表に代打満塁本塁打を放って、社交辞令ではなく本気で尊敬していた王監督と抱き合って喜んだ。

「みんな泣いていたし、オレも泣いてしまった。ベリー・エキサイティング!」

 だが、88年の死球禍では、ついに離脱。49試合の出場に終わった。翌89年には引退を公言。

「日本球界で誰も達成していない打率4割を目指したい」

 と、長打を完全に捨てる。パワーが衰え始めていたこともあったが、最後と決めたシーズンで持ち味をフルに発揮しようとした。シーズン規定打席に到達した97試合目、8月20日の阪神戦(東京ドーム)終了時点で、打率.401。最終的には打率.378まで落としたが、首位打者、MVPに輝いてリーグ優勝に貢献している。実際に日本ラストイヤーとなったのは翌90年だったが、敬遠球をサヨナラ打、西武との日本シリーズに敗れて悔し涙を流すなど、最後まで「ベリー・エキサイティング!」な助っ人だった。

写真=BBM
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