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【MLB】ダルビッシュ&田澤復活へのキーマンは37歳の新任投手コーチ

 

2011年に田澤とレッドソックスで同僚だったホットビー(写真は11年現役当時)がカブスの投手コーチに就任。ダルビッシュと田澤をどう復活させるのだろうか



 大谷翔平のネズ・バレロ代理人は田澤純一の契約も担当している。先日、田澤のカブスとのマイナー契約が発表されたが、選んだ理由を「新しい投手コーチ=トミー・ホットビーが現役時代タズ(田澤)と一緒にプレーした経験がある。そういう存在がいれば心強い」と話していた。

 カブスのセオ・エプスタイン編成本部長は、レッドソックス時代の2008年12月、田澤に3年400万ドルの契約を与えメジャーへの門を開いた人物だが、ユニフォーム組にも顔なじみがいるのは良い。とりわけ今年は渡米11年目で初のマイナー契約で身分保証のない立場だからだ。

 このホットビーコーチ、以前から気になっていた。1年前、ダルビッシュ有がカブスに入団、日々の取材で同球団には「ランプリベンション(失点阻止)コーディネイター」という耳慣れない役職があると分かり、彼が任に当たっていたからだ。フロントの用意したデータやビデオを選手に見せ、アナリティック情報をプレーに生かしてもらう。と同時に、昨年はヒジや上腕辺りの痛みで満足に投げられず苦しい思いをしていたダルビッシュの側にいて、親身に話を聞き、助言を与えるなどしていた。

 メディア関係者にとっても接しやすい人物だった。その彼が昇格、名門球団の投手コーチに37歳の若さで抜てきされた。現役時代目覚ましい活躍をしたわけではない。04年レッドソックスに4巡指名されたが、トミー・ジョン手術もあり、メジャー・デビューは8年目の11年。結果は8試合、4イニング登板で防御率6.75。12年もロイヤルズで9試合に登板しただけでオフに解雇された。

 14年カブスとマイナー契約を結ぶが、キャンプで3試合に投げ左肩を痛め4月下旬に解雇された。今までなら、彼のような実績を挙げられなかった元選手は球界を離れ新しい仕事を探すか、マイナーのコーチで下積みから始めるしかなかった。

 だが近年のMLBはアナリティックによって、選手の獲得、育成、試合の戦い方が劇的に変わってきた。ホットビーは学生時代に財政学と経済を学んだこともあり数字に強く、かつオンラインで大学のセイバーメトリックスのコースを取るなど新たに勉強もしていた。

 カブスの方でもフロントと現場の架け橋になれるハイブリッド(異なる要素を混ぜ合わせた)な人材を求めていたこともあり、14年オフにメジャーのスタッフとして採用したのである。アナリティックといえば、アストロズ、レイズが有名だが、カブスもハイスピードカメラで投球フォームを細かく分析し、回転数、回転軸、回転効率など緻密なデータを取っている。

 しかし、それをうまく使えるかどうかは現場の人間次第。この4年間架け橋として実績を挙げてきたが、いよいよ投手陣の総責任者として真価が問われる。元々探究心旺盛で知識も豊富なダルビッシュ、渡米11年目ですでにノウハウが確立しているベテラン田澤、2人のパフォーマンスをいかに高めていくか。

 エプスタイン本部長は12月のウインターミーティングで「人間関係を構築するのが上手で、情報やテクノロジーを使って問題を解決する能力がある」と高く評価していた。


文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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